ささえる

住みたい街、高崎 宿泊業界の”三銃士”が伝える魅力

人々の行き交う街、高崎市。観光やビジネスで訪れた人が“暮らし”を考えるきっかけとなるのが宿泊施設でのひと時だろう。今回は、高崎街中の顔『ホテル ココ・グラン高崎』と観音山の大自然が魅力の『錦山荘(きんざんそう)』を運営する“三銃士”に、高崎愛を語ってもらう。

2018.09.07

住む街としての高崎

観音山からみた高崎の街

高崎市を訪れて

人々の行き交う街、高崎市。ここ数年、高崎アリーナの活用や高崎芸術劇場の建設などに伴って県外・国外からの来訪者が増えている。観光地というよりはビジネスで訪れる人口が多い高崎市は、そのご縁をきっかけに移り住む人も少なくない。

短期滞在、長期滞在、定住……様々な暮らし方はあれども、一番に気になるのは“街との相性”ではないだろうか。訪れて楽しい街や遊んで楽しい街が、便利で心地よく住みよい街とは限らない。街を歩いて人に出会い、衣食住を満たす中でじんわりと肌で感じるもの。それが“街との相性”なのだろう。

宿泊地から知る高崎市

そんな街と暮らしを結びつける役目を担うのが、“ここでの暮らし”を予感させる宿泊施設、宿泊業界である。観光地や地元グルメからは見えない日常の色――ホテルの窓から眺める風景が、自分の暮らしとなったら――を想像させてくれる。地元の人はなかなか利用しない施設ゆえに、地域とのつながりは見えづらい。しかしながら、もっとも身近な“地域の顔”であることは言うまでもないのだ。

そこで今回は、高崎を代表する二つの宿泊施設『ホテル ココ・グラン高崎』と『錦山荘(きんざんそう)』を運営する宿泊業界の“三銃士”に話を聞くことにした。『ホテル ココ・グラン』専務の木本貴丸(きもとたかまる)さん、支配人の小林貴弘(こばやしたかひろ)さん、統括の牧本祐介(まきもとゆうすけ)さんである。駅から最も近いビジネスホテルが伝える“都会としての高崎”と観音山の中腹に立つ旅館で体験する“田舎としての高崎”。二つの対照的な景色と共に、高崎の魅力を伝える“三銃士”の地元愛を語ってもらおう。

旅の楽しみは宿泊先のお風呂とご飯、な編集長ですこんにちは。

今回は、高崎のOMOTENASHIについてインタビューしちゃいます!

“三銃士”とその舞台

笑顔の絶えない”三銃士” 写真左から木本さん、小林さん、牧本さん

戦うプロフェッショナル

今回の取材は一人に密着ではなく、同じ想いをわが街に抱いて進む“三人の仲間”として紹介する。想いは同じであっても、高崎観やプロフェッショナルである分野は違う。三名のホテルマン、それぞれの紹介からみていこう。

一人は『ホテル ココ・グラン』の専務を務める、木本貴丸さん。一号店のビジネスホテル・北千住店の開業をきっかけに家業を継ぎ、『ホテル ココ・グラン高崎』のデザインや運営を行っている。生まれは東京の足立区、群馬と同じく農作業から生まれた“人情”を大事にする下町で育ったそうだ。高崎との関わりは家族旅行や父親の仕事だったと木本さん。

「夏休みになると親父についてきて『カッパピア』に行って…冬も『カッパピア』でアイススケートをしていましたね。その時泊まるのは『錦山荘』でした。高崎は家族との思い出深い、ご縁のある場所なんです。」

 

二人目は高崎市矢島町出身の、小林貴弘さん。入社後、異例の大躍進により5年目にして『ホテル ココ・グラン高崎』の支配人を務めることとなる。真面目で落ち着いた雰囲気の彼は、見た目の通りに慎重かつ丁寧な仕事ぶり。勉強熱心なホテルの顔である。

「フロントを務めるためには、ホテルのことを知る必要がある――そう思って、ルームスタッフ(室内清掃)を志望したのがはじまりでした。今もなお、日々勉強です。」

 

三人目は宿泊施設開業のプロフェッショナル、牧本祐介さん。「先輩の姿に憧れて」と学生時代からホテルマンを目指していたそうだ。その道25年のベテランは、穏やかな印象とは対照的に、常に全力疾走&獅子奮迅の開業業務に魅せられた男でもある。

「『錦山荘』も『ココ・グラン高崎』も開業をお手伝いさせていただきました。開業は本当に忙しくてやることも山積みですが……あの達成感、皆好きになってしまうと思います。」

 

三銃士――アレクサンドル・デュマの物語になぞらえて呼ばれる呼称は、強い仲間の絆とそれぞれの個性を活かした見事な活躍を想起させてくれる。高崎を背にして戦う3人の男たち、その雄姿とともにこの街の話をしよう。

 

 

明るく爽やかな空間のホテルロビー

ホテル ココ・グラン高崎

JR高崎駅の東口から徒歩3分、全国的にも有名なホテルとなった『ホテル ココ・グラン 高崎』。ビジネスホテルでは日本一位とも言われるデザイン性とホスピタリティは市民の誇りでもある。ホテルのロビーには小川が流れ、青々とした緑が茂っている様子は高崎市の豊かな自然をイメージしているそう。ナチュラル素材のインテリアと開放的なレストラン、メニューも素材の味を活かした“地産地消”の料理を楽しむことができる。

「市民の方からも高崎市がTVに映っていると喜びのお声をいただきまして…」と嬉しそうなのは木本さん。このロビーや客室に共通する“ナチュラル&フレッシュ”のデザインは「ホテルを通じて群馬県や高崎市の良さを知ってほしい」「飽きのこないデザインで何度も来たくなるように」と願いを込めたという。9階以上の客室では各部屋のデザインが異なり、宿泊ごとに違う部屋が楽しめるというのも醍醐味だろう。

このホテルが有名になったきっかけは、とあるTV番組。地元の人なら見覚えのあるその放送の中で、ホテル評論家が絶賛したのがはじまりだった。

「放送で紹介されることも、(評論家が)ご利用になられていたことも知らずに……TVで紹介された時から予約の嵐で大変でした。」と当時を語るのは、現在支配人を務める小林さん。当時副支配人だった彼も、予約対応にてんてこ舞いになったという。中でも人気の最上階の一室「プレミアム ココスイート」は予約のブッキングが起こるほど。現在でも県内外共に人気の部屋はとてもビジネスホテルとは思えない豪華さだ。

「ものすごい反響でした。それでも、群馬県や高崎市に興味がなければそこまで予約も入らなかったと思います。(小林さんの)地元が、高崎市という街が、全国の方にとって行ってみたい街であったことに嬉しさを感じました。」

「当ホテルが群馬県や高崎市の魅力を強く発信できるきっかけになれてよかった、そう思います。」

 

 

大自然を見ながらゆっくり入浴

錦山荘

場所は変わって観音山。駅から10分ほど車を走らせれば街の様子もガラリと変わり、木々に囲まれた自然豊かな高崎が現れる。空がぐっと近づいた山から街を眼下に見ると、同じ市内でも遠い景色と映るのだから不思議である。ここは『錦山荘』。大正四年から続く古き良き高崎の奥座敷だ。

もとより『清水鉱泉』として地元の人に親しまれていた温泉宿『錦山荘』は今年で創業103年目。「100周年にはスタッフ一同盛り上がりました。」と紹介してくれるのは牧本さんだ。温泉はもちろん、料理も絶品。食事目当てに観音山へと足を運ぶお客様もいるという。

「駅から近くて自然を味わえる環境ももちろんですが、板長さんの料理が繊細で感動します。僕はいつも凄く近くでその腕前を見ているので、ぜひ皆さんにもお食事を召し上がっていただきたいと思います。」

「(錦山荘には)社長や社員も思い入れがあり……それが今も『錦山荘』が残っている理由の一つかなと思います。名前や雰囲気も、昔から愛されているものを変えずに継承しています。」

立ち上げ、運営を任された牧本さんが心掛けたもの、それは “温故知新”ともいうべきコラボレーションだった。『ココ・グラン高崎』の“清掃自慢”な部分や旅館には少ないアメニティを取り入れつつ、当時の面影は残していく。

「今は新しくて綺麗な施設がたくさんある中で、ここまで昔の“古き良き趣”が残されている場所は貴重です。街中には近いのですが夜には虫の声が聞こえ、窓からは小さなうり坊が見えることもあります。」

「やっぱり、宿泊業界にいるものとして……高崎市という土地の観光にも携われればと思います。ホテルとは真逆で業務は違うのですが、おもてなしの心は一緒。コミュニケーションをとりながら、サービスをしています。」

そんな想いに応えるように、昔の『錦山荘』を思い返して来館されるお客様は未だに絶えることがない。それだけでなく、「綺麗になったね」と喜ぶお客様も多いという。見た目には見えないが、記憶や想い出の宿る場所の価値はかけがえのないものだ。旅館から送る手書きのハガキには、宿泊のお客様からのお返事がくるという――そんな古くも暖かな付き合いがこの街に生きている。

「維持より立て直した方が楽だと思うんです。それでも残すというのは『皆さんに愛されている場所をなくしちゃいけない』という思いでした。『ココ・グラン高崎』ではどうしても出せない良さがある、高崎にとって必要な場所なんだと思います。」

牧本さん「『錦山荘』は山の中腹になるので、窓から虫さんが『コンニチハ』ということはありますね。…喜んでいただける方、驚いていただける方と様々ですが。」

編集長「山の醍醐味かもしれませんね…っ!」

というこぼれ話もありました。なんだか可愛いイメージに騙されそうですが虫の話です。

街を楽しむ

スタッフの仲が良すぎるほど!と話す牧本さん

この街の魅力

ここまで、タイプの違う二つの宿泊施設について“三銃士”の想いと共にお伝えしてきた。駅前と郊外――高崎市の街並みを表すかのように対照的な景色から、高崎を訪れた人は何を思うのだろうか。木本さんが思う高崎の良さを伺った。

「住む人にとって便利な街だと思います。特に、車好きにはぴったりですね。街の作り方が欧米風というか、駅中心ではなく道路だったり教会だったりがポイントになっている。その地域ごとに暮らしやすい環境だと思います。」

「それから……高崎の好きなところは人間に関わる部分ですかね。ホテルって施設も大事ですがそれ以上に人、スタッフが大事。県外から来た私にとって、高崎市には個性的な人、文化的に豊かな人が多い街だと感じています。」

その言葉に続くように、牧本さんはこう話す。

「私が経験したホテルの中で、高崎は(施設が新しいこともありますが)クレームが少ない。というのも、お客様と働くスタッフがどちらも柔らかく優しい方ばかりなんです。不思議と集まってくる、というか。だからこそお客様も意見を気軽にくださいますし、私たちも一つ一つ対応ができるんです。」

お客様の意見を取り入れる、それが顕著に表れているのが『ホテル ココ・グラン高崎』の貸し出し備品の数だ。お客様の「あったらいいな」の声を拾い上げていくことで、“靴の乾燥機”や“ナノスチーマー”“コンタクトの保存液”なども無料で使うことができる。「女性に喜ばれるサービスは、男性も喜ぶこと間違いなし」をモットーに、シャンプーなどのバス用品にもこだわっている。

「理想のサービスを“思う”のと“実行”するのは全然違っていて……今までの宿泊施設だとできない部分もありました。お客様の要望が叶うことは、スタッフの要望が叶うことでもあって、本当に楽しく接客させていただいています。」

スタッフ同士のつながりが、お客様とのつながりが、自然と高崎市の魅力“人”をアピールしてくれる。宿泊のみならずランチ利用や駅利用の方が立ち寄るロビーは、この街の優しい雰囲気で満たされていた。「ビジネスでホテルを利用された方が、のちに家族と『錦山荘』に来てくださるんです」と言うように、宿泊施設が“高崎市の一歩目”となって、人々を街へと誘ってくれているようだ。

支配人の小林さんはこう話す。

「急激に成長している高崎の街中と、私の地元矢島町のようにのどかな部分。どちらも違っていて、ゆっくりと楽しめる街が高崎だと思います。どちらが良いとか悪いとかではないですね。」

「なので、誰でも来たくなるような“人の集まる場所”が必要なんだと思います。その一つに『錦山荘』や『ココ・グラン高崎』がある……『違う街にも行ってみようかな』という興味のきっかけになれば、いいですよね。」

「わたしは時間のゆっくり流れる高崎が好きですね」と話す小林さんの言葉には、地元の風景が広がっている気がした。高崎市の魅力は“人”である――そこには、熱い地元愛に溢れる“三銃士”の存在も欠かせないに違いない。

 

 

市民に愛される宿泊施設でありたい、と語る木本さん

市民に愛される街

最後に、高崎市の宿泊施設のささやかだが素晴らしい魅力を紹介しよう。先には“地元の人はなかなか利用しない”とお伝えしたホテルや旅館。“三銃士”から意外な事実を教えてもらうことができた。

「基本は県外の方が多いですが、想定よりも県内、そして市内から宿泊される方がいらっしゃいます。旅行気分を味わうためにであったり、里帰りであったり。近くに住まわれているのに泊まってもらえるというのは、宿泊業をやっていてこれ以上ない愛を感じます。」

「また、地元の方は特別室に宿泊される方が多いです。最上階の『プレミアムココスイート』の料金は高めですが、露天風呂や室内ジャグジー、岩盤浴などを楽しんでいただいております。」

県内、そして市内からの予約は10%を超えるという。『ココ・グラン高崎』の部屋でくつろぎ、『錦山荘』の食事を楽しむ。暮らしを豊かにする要素として、宿泊業が存在しているのだ。“観光”とは違った、“その街で暮らすことを楽しむ”新しいカタチのサービス。日々変わる高崎を知り、そして変わらない街の想いに触れる――そんな街の愛し方を、高崎人は知っている。

 

 

 

”高崎と歩む未来”を語る小林さん

仲間の輪を広げて

今日も高崎を愛する“三銃士”は、県内外に向けて街の魅力を発信している。私たちに見えるのは背中が多くとも、その背中で語る言葉は優しく私たちに向いている。支配人の小林さんは「地域へできることをずっと考えています」と話してくれた。これからの活躍も期待しながら聞いてみよう。

「地域の方に向けたホテル、とはいかないと思いますが、地元の人に認めてもらえるサービス・役に立てる部分を考えています。ホテルランチなんかは地元の方に気軽に利用いただける部分かなと思っていますので、ホテルを身近に感じられるようなきっかけになればと思います。」

「今は『錦山荘』が103年、『ココ・グラン高崎』が6年。次の節目を迎えられるように日々精進していきたいと思っています。『高崎といえば……』と直結するイメージになるように、頑張っていきたいですね。」

一人ではできないことも、仲間となら。企業や事業という形の中で、街を変えていく想いに触れることができた。事業が育つためには街の活気が欠かせず、街の活気が働く人々に力をくれる。すべての人が、知らず知らずのうちに地域と二人三脚で走っているのかもしれない。全く違った二つの宿泊施設が、互いの背中を預けあっているように。

人々の行き交う、高崎の街。暮らす人も、訪れた人も。皆がそれぞれの高崎を楽しめるようになるといい。

ホテル ココ・グラン / 錦山荘

ホテル ココ・グラン高崎 
 住所:群馬県高崎市東町3-5
 電話:027-320-1155

高崎観音山温泉 錦山荘
 住所:群馬県高崎市石原町2892
 電話:027-322-2916

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

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群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
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