つたえる

高崎市南八幡地域 皆でつくる地域の居間、未来へ続く街づくり

“子供から老人まで、地域で暮らす全ての人が居心地いい場所”を目指して地域づくりを行う南八幡地区の取り組みをインタビュー。根小屋町の運送会社『株式会社IST急送 チビトラ』の代表を務める吉井さんに、『こちら、学校前食堂』の取り組みと「未来の地域」についてお話を伺ってみた。

2020.10.22

高崎市の地域

子供たちの元気な声が響く南八幡地域 世代を超えた交流の様子を取材しました!

地域と居場所

高崎市と居場所。多種多様な地域色を持つこの街には、地域の数だけ個性豊かな暮らしがある。商業が盛んな街、モノづくりの職人が暮らす街、子育てに力を入れている街……。それぞれの人や暮らしに合わせた“居心地の良い場所”がある中で、あなたのお気に入りはどんな街だろうか。

 

子供も大人も楽しそうに過ごす店内でインタビューをさせていただきました~

『こちら、学校前食堂』

今回取材したのは、“子供からお年寄りまで、地域で暮らす全ての人が居心地いい場所”を目指して地域づくりを行う南八幡地区――山名町で『こちら、学校前食堂』を立ち上げたメンバーの一員である吉井幸久(よしいゆきひさ)さんにお話を伺った。

根小屋町の出身で、地元で運送会社『株式会社アイエスティー急送 チビトラ』の代表を務める吉井さん。全国を舞台に活躍する運送会社の活動と絡め、地元地域へ力を注ぐ熱い理由をお話いただいた。中堅世代が中心となって進める『こちら、学校前食堂』の取り組みを知る中で、これからのまちづくりで目指したい「未来の地域」について考えてみるとしよう。

美味しそうな料理の香り、カラフルな駄菓子、子供たちの笑い声!

わくわくが溢れる食堂から、深~い地域の話を掘り起こしていきますよ♪

地域の宝

食堂に入るとまず目に入るのが黒板アートの大木 『子ども食堂』の成果が一目でわかります!
緑の付箋は「大人から子供へのメッセージ」、ピンクの花々が「子供たちからの感謝のメッセージ」となっているんですよ~

千の倉より子は宝

『こちら学校前食堂』は、南八幡小学校地区周辺にて事業を営む有志が運営する食堂&駄菓子屋。今年8月にオープンしたばかりだが、地域の子供から大人まで幅広い世代を繋ぐ場所としてにぎわいをみせている。吉井さんから伺った食堂のコンセプトは“地域の居間”。まずは彼に『こちら学校前食堂』――通称、『がまえ食堂』の紹介をしていただこう。

「昨年10月ごろから地元に住む同世代の仲間と共に企画を立ち上げた『がまえ食堂』は、メンバーの『子供たちが楽しく遊べる場所づくりがしたいね』という一言から始まりました。曜日を限定したランチ営業と夕方5時までの駄菓子屋営業をしながら、“地域のリビング・居間”を目指して運営を行っています」

「入り口の黒板には大きな木が描かれており、月に1度開催される『子ども食堂』の取り組みを表しています。1枚200円で購入していただける『ありがとうチケット(葉型)』には購入者からのメッセージが書かれており、『子ども食堂』で食事をした子供たちが付箋(花型)でお礼の言葉を添えるんです。来店者の多くの人がチケットを購入してくださり、また、貧困家庭に限らず“地域の子供たち”が食堂を楽しんでくれています。1人でも多くの人に、居心地の良い場所と感じてもらえれば嬉しいです」

多くの市民に親しまれていた名店で腕を振るっていたシェフがランチ料理を担当し、地域のお母様たちがボランティアで駄菓子の会計・店舗運営に協力してくれているという『がまえ食堂』。美味しい料理、地域交流、昔懐かしの駄菓子……様々な目的で訪れる来店者は、徐々に増えているようだ。

食堂の雰囲気は開放的ながらも“地域の中に入り込んだような”温かさ。吉井さんも「いずれは子供たちがここで宿題をしたり、地域の人が用事はなくとも訪れてくれるようになれば」と希望を語ってくれた。

地域の宝である子供たちの健やかな成長を支える地域の居間『がまえ食堂』

その取り組みは飲食の分野に留まらず、多くのモノ・コトを巻き込んでいく予感…です!

がまえ食堂に置かれたノートには、様々な世代の書き込みが! 「子供のリクエストに、返事を書いたんですよ」と吉井さんがご紹介してくださいました

亀の甲より年の劫

続いて伺ったのはユニークな店名の由来と、そこに込められた想い・ビジョンについて。根小屋地域で育った吉井さんの“南八幡での思い出”と共にお話を伺った。

「南八幡地域と呼ばれる4町内――山名町、根小屋町、阿久津町、木部町にはそれぞれ駄菓子屋があり、子供の頃はよく遊びに行ったものです。今ではどの町にも駄菓子屋はなくなってしまいましたが……ここの『がまえ食堂』がある土地の向かいにも昔は駄菓子屋があり、子供たちは“南八幡小学校前の駄菓子屋”ということで、通称『がまえ(学校前)』と呼んでいました」

「僕らが子供の頃に通った『がまえ』、その名前を知っている大人は多いでしょう。今の食堂の愛称は、昔からこの地域に暮らしている方やかつての『がまえ』に通った子供たちが懐かしく思ってくれればと考え、名前を受け継ぎました。昔も今も地域で暮らしている自分たちがパイプ役となって、地域の人を繋ぐ場所を作る。そんな“昔と今を繋ぐ”想いを込めて、『がまえ』という名前で呼んでいます」

事業を始めるにあたり、地域の様々な世代と話をしたという吉井さん。特に年配の方との交流から多くの知恵・意見を貰うことができたという。その中で感じた昔の地域への愛着、これからの地域への期待。途切れさせたくない想いが下支えとなって、『がまえ』の名前が世代を超え親しまれていく。

「また駄菓子屋を始めたことにはもう一つ、『子供たちの自己主張ができる場所でありたい』という理由もありました。今は友達と外遊びをする場所や駄菓子を買って食べる場所、大人と関わり社会活動をする機会が減っています。『がまえ食堂』では駄菓子を買うときに子供自身が個数を記入し、自分で計算をして会計を行うのですが、子供たちが楽しみながら地域の人たちと関わることができればいいなと思います。いずれはここでモノづくりの体験をしたり、奉仕活動をしたり。子供たちに多くの経験を提供したいです」

駄菓子屋ブースには、お菓子を前に真剣な眼差しの子供たちがいる。友達と購入するお菓子を相談しあいながら、時に大人の助けを借りて計算をしながら、自然に社会・地域へと足を踏み出している。

「学校の先生や保護者、地域の様々な世代の応援があって『がまえ食堂』は実現しています」と吉井さん。南八幡地域で共有されている“想い”が、子供たちがのびのびと成長できる場所づくりを支えている。

 

場所づくり地域づくり

自家製野菜もたっぷりつかった食堂ごはん ぜひ皆さんも金・土・日・月の4日間を狙って訪れてみてくださいね!

届ける仕事

吉井さんの本業は、地元である根小屋町から全国へと荷物を運ぶ運送会社。「なかなか地域と関わるのが難しい仕事ではありますが」と紹介してくれた地元との繋がりを教えていただこう。

「小さなトラック(チビトラ)で地域の困りごとを助ける会社として父が始めた『株式会社アイエスティー急送 チビトラ』は、『必要な時に、必要な量を、必要な方法で届ける』ことをモットーに引っ越しや小さな部品から大きな装置の運搬・設置など、顧客のニーズに合った車両での運送を行っています。近い場所(地域)と関わることが難しい部分もありますが、初心がブレることのないように『地域の中でどうやっていくか』を考えながら仕事をしています」

吉井さんが今の会社を継いだきっかけは、県外の大学を卒業し地元へ戻ってきた時。ある朝お父さんから「今日来られなくなったドライバーの代わりに、配送へ行ってくれ」と声をかけられたことがきっかけだった。

「会社を継ぐ・継がないは自由だと言われていたんですが……父の頑張る姿を見ていたので、自然に始めたというか。今年で22年目になりますが、自分が代表になってから地域の広いネットワークを持っていた父の凄さを感じますね。『水道が壊れたな、じゃあ地域の○○に直してもらおう』……そんな風に父は、業務だけでなく暮らしの全てで地域と繋がっていました。僕も父を目標に、地域の人に『チビトラじゃなきゃだめだ』と頼ってもらえるよう、地域に頼り/頼られる会社づくりをしていきたいです」

吉井さんの会社では、全国区の仕事だけでなく地域住民の引っ越しや『高崎OPA』の『高崎じまん』へ納入する地域野菜の集荷業務なども請け負っている。そうした仕事はやはり、運ぶ方も嬉しいのだと話を聞くことができた。

「うちだけでなく、多くの南八幡地域で商売をしている人が地域との関わり方に悩んでいたと思います。『がまえ食堂』という地域交流の場所を、地域を考える場所/地域でまとまる時間づくりにも活かしていきたいです」

「美味しいごはん」は、料理をする人だけでなく、野菜を作る人や運ぶ人、様々な人の手を渡ってできている……そんな当たり前だけど大切なことを実感した編集長です(しみじみ)

小さな花が実になって、より大きな花畑を作る"種"となる……そんな雰囲気を感じさせる、南八幡地域の取り組みですね

地域の未来

『がまえ食堂』、その空間づくりは地域の力に支えているところが大きい。町の腕利きシェフがつくる食材と料理、地域ボランティアで運営される駄菓子屋、有志の力で実現した看板やベンチ、ご近所さんが「子供たちへ」と持ってきてくれるサワガニや食材の数々……。インタビューの最後に伺ったのは、吉井さんをはじめ多くの人の手が作り上げた“地域の居間”、その秘訣と温かな地域の魅力についてだ。

「ここは“皆で作った食堂”、立ち上げメンバーだけでなく様々な人の意見と力で実現しています。来店された方やご近所の方から『これがあったらいいよ』『こういうのはどうかな』と意見や提案をいただいて。南八幡の4町内に暮らす人の多くは“幼稚園の頃から顔見知り”と小学校~中学校まで過ごすので、地域の団結力が強く、こうした企画に賛同してくれる人が多いのかもしれません」

地域性も活かしながら営業を続け、オープンから2か月。吉井さんが最も嬉しく、また『がまえ食堂』の成長を感じたのはある保護者からの相談だという。「がまえ食堂に、子供たちだけでご飯を食べに行かせてもいいですか?」――親が子を安心して送り出せる“地域の居間”として信頼されている、そんな想いを感じた彼は「本当にありがたい言葉だと思いました」と振り返る。

「昔はね、親も『1000円渡すからご飯食べてきな』って子供を外に行かせられたものですが、今はそういう時代じゃない。この南八幡地域においては文房具1つ買うにも親の車がないと難しくて、“子供だけで”社会活動できるチャンスがあまりないんです。そんな時に『がまえ食堂なら安心して行かせられるね』という親御さんたちの声は、すごく嬉しかったです。少しずつ“地域の居間”になってきているのかなと実感しました」

今は両親共働き・土日も仕事という人も多い。そこに地域の人が運営する、安心したご飯を出す“居場所”は、大人にとってもかけがえのない場所だろう。

「僕らの小さい頃は、地域の人がすべての子供を自分の子のように面倒みてくれていました。1人で遊んでいれば『どこの家の子だよね』と声をかけてくれる大人がいて、おじいちゃんおばあちゃんも構ってくれて。その風景を、これからの南八幡地域に残していきたいと思っています。子供も親もお年寄りも学生も。誰も孤立しない地域づくり、帰ってくる場所づくりをしたいです」

吉井さんたちの活動は、年代や性別・意見の異なりを超えて地域の人々を繋ぎ合わせていく。中堅世代という中間のポジションからの発信、南八幡地域という地域性、様々な要素が絡み合ってうまくいった事例かもしれない。

それでも地域の強みを活かした街づくり/ともに暮らす人々との関わり方は、全ての市町村にとって影響を与えるモデルケースとなるだろう。彼らの活動を参考としながら、私たちも高崎という大きく小さな枠の中で温かなまちづくりをしていこう。

『こちら、学校前食堂』

住所:〒370-1213
    群馬県高崎市山名町1567−1
電話: 027-388-8780

営業時間:金曜日~月曜日の 11時30分~14時00分

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

どうも、こんにちは。編集長の西です。
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信していきます。

一言:新型コロナウイルスの流行で、わたわたする日々が続きますね
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  (なになに、「リフォームがしたい?」 そんな方は(株)正和まで)

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