ささえる

高崎市常盤町 「駐車場」と「自販機」が支える、街の循環と新たな景色

『株式会社駐車場をさがせ』の代表・船越谷さんにインタビュー!2021年から始まった新事業「自販機をさがせ!」と本業のコラボレーションについて、取り組みの原点となる想いをお聞きしました。

2023.10.08

高崎市の街並み

普段何気なく過ごす街を歩くと、街の歴史や変化を感じる瞬間ってありますよね
私たちの暮らしを支える地域は100年先にどうなっているのか・・・今回はそんなテーマから記事を始めてみたいと思います

変化の多い街、高崎市。昔ながらの名店や名所が残る一方、昨今は街のあちこちで多くの店や人の様子が移り変わっていく。地域の歴史や古くからの想いに触れるたびに思うのは「良い変化をしているのだろうか」ということ。“便利で快適な暮らし”という側面だけでなく、「100年先へ続く街づくりができているのだろうか」と立ち止まって考えてみたい。

『自販機をさがせ!』

群馬県庁32階の官民共創スペース「NETSUGEN」にてお写真を撮らせていただきました
写真右側に移っているイノベーション自販機については、記事後半でご紹介致します。最後までお楽しみに!

今回訪れたのは、高崎市常盤町。『株式会社駐車場をさがせ』の代表・船越谷尚彦(ふなこしやなおひこ)さんにお話を伺った。高崎市内でお馴染みの駐車場会社「駐車場をさがせ!」を運営しながら、一昨年(2021年)から「自販機をさがせ!」事業を開始。双方の事業をコラボレーションさせて、市内に面白いスポットを増やしている。

「目の前にいる人を見て仕事をしています」と仕事への情熱を語る船越谷さん。駐車場事業と自販機事業に共通する“地域の人”に対する想いは、変化の多い時代の中では忘れられがちな「大切にしたい価値観」を教えてくれる。仕事を通じて地域と関わり、街を見つめる船越谷さんの想いをご紹介しよう。

「駐車場をさがせ!」と言えば、市民なら一度は見たことのある看板ですよね。地域密着の駐車場事業と自販機事業、その裏にある想いをトコトンお聞きしました!

0から1をつくる仕事、1を10へ育てる仕事

青字に白の駐車場案内は、市内でおなじみの看板

北海道生まれ、高崎市経済大学出身の船越谷さん。学生時代から起業に興味があり、大学進学を機に高崎へやってきたという。まずは現在の事業に繋がる“学生時代の起業”のお話を伺った。

「経営の単科大学である高崎経済大学に魅力を感じ、高校を卒業して高崎に来ました。実家が商売をしている環境で育ったので、自分も起業したいと思い、在学中はよく都内に足を運んで様々な企業に事業プレゼンをしていました。最初に取り組んだのは、学生と企業を繋ぐ『インターン求人』のフリーペーパー事業でしたね。当時はまだ『インターンシップ』という言葉が海外から入ってきたばかり。僕の周りでは『良いインターン先が見つからない』と困っている学生がいて、都内に出てみると『良い学生に出会えない』という企業の声を聞いて……双方をマッチングする冊子を作る事業を起こしました」

ベンチャーブームが追い風となり、事業への投資や広告主としてサポートしてくれる企業を見つけた船越谷さん。全国110の大学に冊子を配布し、10万部を発行。経営者と学生が出会うリアルイベントも開催し、事業は順調に進んだ。

「事業が完結したのは四年生の冬。高崎の大学に通いながら東京で仕事をしていて、気付いたら周りの学生は皆就職が決まっていました(笑)。皆に『今後どうするんだ?』と言われながら始めたのが、学生間の車のリユース事業。卒業して車を手放す四年生と車が欲しい新入生の声を聞いて、車を綺麗にして渡したり、廃車処理を手伝ったり……」

「そんな時、ゼミでお世話になっていた経営者の方と話す機会がありました。その方は僕のこれまでの話を聞いて『本物の経営者になりたいなら、次は“1を10にする仕事”をしてみたら?』とアドバイスしてくれたんです。これまでは“0から1を作る仕事”をしてきたので、事業を育てるイノベーションの力を養ってみたいと思いました」

「そこから、その方が運営されていた『駐車場をさがせ!』事業を引き継がせていただきました」と話す船越谷さん。学生時に起業した事業を続けるのではなく、地域の事業を引き継ぐ決断をしたという。22歳で入社し、2年後に事業を譲り受け起業。こうして「株式会社駐車場をさがせ!」は始まった。

「駐車場をさがせ!」始まりの景色

先代からの想いを引き継ぎ、今の街に必要なことを――と話す船越谷さん
駐車場という無人の空間に隠された、地域への熱い想いが伝わります

船越谷さんが「株式会社駐車場をさがせ!」を始めたのは2009年。当時から画期的なシステムを採用していた事業内容、そして駐車場という空間への想いをお聞きした。

「当時、駐車場は地主さん個人か不動産屋さんが管理していることがほとんどでした。部屋を借りる延長線上で貸出していたので、車を一台停めるのに多くの書類や手間が必要だったんです。当社は来店不要で、電話と郵送のみのやり取りで管理していました。今は電子契約になり、さらに手続きは簡単になりましたね。地主さんに土地の有効活用をお任せいただいて、駐車場を使いたい方へ最適な駐車場の提案を行うことが事業内容です」

「そもそもの事業が始まったのは、1990年。ちょうど道路交通法及び保管場所法の改正が行われた頃だと聞いています。90年頃の高崎市内は路上駐車がとても多く、街中にぽつぽつある空き地を見た先代が『駐車場不足の解消と遊休地の有効活用』として駐車場事業に乗り出しました。創業時の『駐車場があれば、街中の環境が良くなるだろう』という社会貢献的な想いは今も大切にしているところです」

ちなみに、個性的な社名の由来を聞くと「1990年頃といえば、赤白縞々の人を探す絵本が流行った時期。きっと、オマージュしたんだと思います」とのこと。子どもの頃にやり込んだ記憶がよみがえってきました・・・!

「自販機をさがせ!」始まりの出会い

お話に登場するお菓子の自販機はこちら!
Gメッセ近くにありますので、近くにお立ち寄りの際は探してみてくださいね

そして2021年、『自販機をさがせ!』事業が始まった。「駐車場事業から始まった」と語られる、新たな事業についてお話いただいた。

「駐車場事業で扱う土地は自然物。駐車する車は長方形ですが、土地の形は様々なので、駐車区画の他にデッドスペースができることが悩みでした。これまでは野立て看板を立てていたのですが、もっといい活用方法はないかと模索していたんです。すると、コロナ禍で『非接触販売のために自動販売機を買ったが、置き場所がなくて困っている』というお菓子屋さんに出会いました」

「土地の利用契約をサポートしてほしい」という相談があったという船越谷さん。これまでの駐車場事業で培ったデータが、大きなコラボレーションを生み出した。

「僕たちは高崎市内に840か所程の駐車場を管理していて、誰がどんな目的で利用しているかを知っています。そこで、自販機で販売したいお菓子のターゲット層が多く利用する土地を探してご提案しました」

「その後、無事に自販機を駐車場に設置。話はこれで終わるかと思ったんですが、お菓子屋さんが設置した時『僕はここからがスタートです』っておっしゃったんですよ。不動産屋としての仕事は終わりなんですけど、その言葉を聞いたら『ここで終わりにできないな』と火がついて。せっかくお菓子屋さんと一緒に自販機事業のことを考えたので、PRを手伝えないかなと思ったんです」

TVやラジオで宣伝を始めると、コロナ禍の自販機ブームに先駆けた取り組みは一躍話題に。しかし、一方で「場所がわからない」といったクレームも多かった。船越谷さんは「住所は建物を示すもの。路上に設置する自販機には住所がありませんから、場所がわからないのは当たり前でした」と話す。

「建物のない土地――駐車場や自販機には“地番”があるのですが、一般のナビではわかりません。そこで、駐車場へ案内するために作ったシステムを転用して、全国の自販機を案内するポータルサイトを作りました。サイトには自社で設置した以外の自販機が多く掲載されています。やっぱり地場のお店って大事ですから、コロナ禍で大変な飲食業の皆さんの力になれたらいいなという想いがありました」

「駐車場事業をしていると、今の街は“車があること前提”で作られていることを強く感じます」と船越谷さん。裏を返せば「車がない人には住みにくい街」ってことですよね。
高齢者の免許返納が推奨される時代、本当に「暮らしやすい街」はどんな街なのかを改めて考える必要がありそうです。

「イノベーション自販機」が生み出すもの

事業者と商品に対し「広め・つなげ・深める」をテーマにしているイノベーション自販機
QRを読み込むとアンケートに回答できる仕組みも、そうした想いから生まれたそうです

地域貢献を軸とした二つの事業に取り組む船越谷さん。最後にお聞きしたのは、現在群馬県庁32階で稼働中の『イノベーション自販機』について。県内の素晴らしい事業者や商品を広め・つなげ・深めることを推進し、県内事業者のテストマーケティングとして活躍する自販機から見えてきたことを教えていただいた。

「自販機事業を運営していると、次第に『自販機ってどこで売ってるの?』『どうやって始めたらいいの?』と聞かれるようになりました。自販機って意外と高価で、ちょっとチャレンジするために購入するにはリスキーなんですよ。そこで、小規模なお店でも試しやすいように企画したのが『イノベーション自販機』です」

月額賃料を支払うことで、自販機での販売をテストできる仕組みは好評。実際にテストマーケティングを経て、自社で自販機を購入した企業もいるという。

「僕は『イノベーション自販機』を稼働させてから、群馬県内のすごい人や物をたくさん知りました。特に自販機事業に乗り出す人たちは、コロナ禍でもめげずに『自分の力で何とかする』という力のある人ばかり……そういう熱い人を色んな人に応援してほしくて、全国から人が訪れる県庁に自販機を設置しています。商品を売るだけでなく、商品や想いを広めるメディアとしての自販機なんです」

商品にはそれぞれQRコードがついており、購入した消費者からのフィードバックを受けることができる。商品と応援する人を繋ぐ自販機が、より良い商品を生み出し、街の魅力を高めていく。

「人が街を作って、街が商売を成り立たせ、人を生かす……だからこそ、目の前にいる人をちゃんと見て仕事をすることが大切だと思います。商売に“一人勝ち”はないし、周りの人の困っているところに自分の仕事がある。自分の身の丈にあった商売をして、街の循環の中で暮らしたいと思います」

これからの高崎の街について「100人勤める会社が1社あるより、100人社長がいる地域になったら面白い」と語る船越谷さん。現在は学生時代から培ってきた学びや経験を学生たちに伝える活動にも取り組み、人材育成にも力を入れている。

人が街をつくり、街が仕事を作る。仕事が生み出す魅力は人を呼び込み、新たな街が作られていく――そんな大きな循環を感じる、船越谷さんのストーリー。私たち一人一人の物語は、高崎の未来にどう影響を与えていくのだろうか。

様々な暮らしが描かれた大きな地図を想像しながら、この街の暮らしを楽しみ続けたいと思う。

駐車場をさがせ!/自販機をさがせ!

株式会社駐車場をさがせ
住所:群馬県高崎市常盤町133
電話:027-328-8401
【営業時間】9:00~18:00 ( 平日 )

★「イノベーション自販機」は群馬県庁32階NETSUGENにてご利用いただけます

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

どうも、こんにちは!
群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。

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