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高崎市上中居町 ”沖縄の海”をつくる親子が語る、アクアリウムのある暮らし

“沖縄の海”を実現したいと活動する、水槽メンテナンスサービス『美ら海』の代表・喜納兼雄さんと兼秀さん。飲食店や個人向けに熱帯魚のある空間をプロデュースしている。アクアリウムが趣味という喜納さんの想いと叶えたい夢とは何か。親子の水槽が与えてくれる“コミュニケーションのある暮らし”について話を伺ってみた

2019.02.16

高崎市と海

引き込まれるほどの美しさ。沖縄の海をそのままきりとったような水槽から、今回の物語は始まります(喜納さん撮影)

高崎市とペット

様々なライフスタイルを楽しめるまち、高崎市。地域ごとに特色のある住まいや自然環境は、家族や仕事・趣味の在り方を自由に選択することができる。日本人の4割ほどが共に暮らしているというペットとの暮らしも、このまちは広く受け止めてくれるだろう。異なる生き物との温かな交流は、日々の暮らしを鮮やかに彩ってくれる。

しかしながら近年ペットの飼育数は減少傾向にあると聞く。犬や猫――散歩やケアにかかる時間や体力・住居の制限、医療費などが課題となっているようだ。ペットと飼い主の高齢化という課題は、豊かな暮らしの実現のために解決が必要と言えるだろう。

高崎市上中居町にある『美ら海』の店舗&ショールーム。外観からすでに、わくわくしてきますね……!

水槽メンテナンスサービス『美ら海』

世界中で飼われているペットの中で、犬と猫の次に多いと言われているのが魚である。揺らめく水やオーナメントをかき分けて泳ぐ色とりどりの魚たち。物静かな彼らは室内で飼育可能なペットの代表例であり、幼い頃に金魚を飼った経験や飲食店などでインテリアも兼ねた水槽を見たことのある人も多い身近な生き物だ。

今回紹介するのは国内の熱帯魚の聖地ともいえる“沖縄の海”を、高崎市で実現したいと活動する水槽メンテナンスサービス『美ら海』の代表・喜納兼雄(きなけんゆう)さんと息子の兼秀(けんしゅう)さん。市内を中心に飲食店や企業のエントランス、個人のリビングへ熱帯魚のある空間をプロデュースしている。元々アクアリウムが趣味だったという喜納さんが抱く、水槽への想いと叶えたい夢とは何か。喜納さん親子の水槽が与えてくれる“コミュニケーションのある暮らし”について話を伺ってみよう。

記事2枚目の写真中央にご注目、見えました?見えましたか?そう、かわいいカメちゃんがいるんですよ~(ハイテンション)

“ぷち”水族館のような『美ら海』のショールーム、インタビューとともに写真も、お楽しみくださいね!

仕事に生きる、趣味と生きる

自身もアクアリストである喜納兼雄さん。インタビューには載せきれないほどの”魚愛”を、ショールームにて聞けるかも!?

東京時代

熱帯魚を専門に水槽のトータルプロデュースを行っている『美ら海』。10年前、代表の兼雄さんが地元“沖縄の海”の魅力を自宅や職場で気軽に楽しんでほしいとアクアリウム業界に入ったのが始まりだ。趣味が仕事につながったという事業のきっかけを聞いてみた。

「僕の出身は沖縄県、高校卒業と同時に東京へ出てサラリーマンをしていました。結婚後、高崎に家を買って都内へ通勤していたのですが……ふと、東京行きの新幹線で『このまま会社を続けていていいのか』と思ってしまいまして。気が付けば会社のデスクで辞表を書き、突然辞めたという経緯があります。その時には趣味の水槽を仕事にしようとは考えておらず、同業の方に『趣味でやっていたノウハウもあるし、やってみたら?』と勧められてから考え始めました。いつでも辞めれるようにですね、自宅の駐車場を改装したのが始まりなんですよ」

『美ら海』を開業した当時、喜納さんは52歳。新たな分野への挑戦は「不安に思わなかったですね」と振り返る。付加価値をつけて一生懸命仕事をすれば、うまくいくはずだ――喜納さんの新たな夢と共に『美ら海』は動き出した。

「一生懸命仕事をすれば、どんな問題も必ず解決するだろうという想いがありました。このまちに『水槽を置いたらいいだろうなぁ』という場所は数多くありましたし、ご近所のみなさんからお客様も紹介していただきました。こだわったのは“安心して楽しめる水槽”であること。料金が定まらない業界ですが、お客様にわかりやすいように値段をパッケージにして提供しています」

生き物に関わる商売、そして趣味の世界であるアクアリウムの業界は、設備や熱帯魚の“相場”といったものがないという。“消費者”目線で分かりにくいと感じていた値段の問題を明らかにすることで、熱帯魚を気軽に楽しんで欲しいと考えた喜納さん。水槽の設置から魚の導入、月々のメンテナンスまでオプションや追加料金のない真摯な『美ら海』の仕事スタイルは、都内からも注目を集めはじめている。

「仕事はシンプルで、お客様のところへ水槽を設置して喜んでいただくことだけです」と喜納さん。聞こえは簡単ですが、アクアリストとしてこだわった『美ら海』の圧倒的なサービスは驚くべき内容なんですよ!喜納さん親子のつくる“沖縄の海”、ご紹介してまいりますっ

ストック水槽をみせてくれる兼秀さん。黒いパーカーを魚は覚えているようで「餌かなとおもって寄ってくる」そうですよ

高崎のまちで

高崎市上中居町に事務所を構え、地域に根差したメンテナンスサービスを続けてきた喜納さん。口コミで人気が広がり、平成29年7月には同町にショールームをオープンさせた。高崎のまちに癒しの空間を届ける喜納さん親子、“沖縄の海”を広める活動の様子をご紹介しよう。

「サービスは日本一だと思っています。なかなか同じ値段、同じ内容の会社は見ませんね。『美ら海』でしかできないことをしたくて……例えば『イソギンチャクの無料導入』をしています。イソギンチャクは状態が悪くなって死んでしまうと、水槽の水質が一気に悪化し“リセット”が必要になることもあるハイリスクな子。『美ら海』でも2度ほど“リセット”した経験がありまして『イソギンチャクを入れるのを辞めようかな』と思ったこともありました。それでも……僕の個人的な想いですが“イソギンチャクの側で産卵するカクレクマノミ”をお客様にお見せしたいんです。まるで映画のワンシーンのように、感動と喜びを伝えられるはず――そんな想いで続けています」

現在管理している水槽の6割ほどで“カクレクマノミの産卵”が見られたと話す喜納さん。ストック水槽を活用し飼育したイソギンチャクを導入するようにしていることや、お客様の水槽の様子を窺いながら管理していることを教えてくれた。仕事としてだけでなく、趣味としても水槽に愛情をもって向き合う彼だからこそ、こだわりたかったシチュエーションなのだろう。設置したお客様からの評判は「引っ越しによる(メンテナンス対応範囲外のための)水槽撤去以外の解約がない」という事実に表れている。

「ありがたいことに、お客様の中には10年近く設置いただいている方もいらっしゃいます。水槽というのは“あったらいいもの”ですが“なくてもいいもの”なんですよね。だからこそ常に喜んでいただけるように、お客様の要望を聞いてチャレンジし続ける。僕にできないこともありますが、出来る限りお客様が水槽を楽しんでいただけるような仕事をしていきたいと思っています」

大震災の時に解約が続いたというアクアリウム業界。生活の上では“必要不可欠でないもの”ですが、得てして“暮らしを豊かにするもの”はそういうものであったりします(暮らし、そして心が豊かでないと楽しめないものですよね)

多くの水槽設置のエピソードを聞く中で、喜納さんの人柄に惹かれるお客様の気持ちを感じました

水槽の中にみえる未来

タッチプールのみずみずしさをお届け!……って、なぜヒトデを裏返しに?
「(兼秀さん)ヒトデを裏返しておくと、だんだん足が出てくるんですよね。小さい透明な粒、見えますか?」

海に触れる

喜納さんの息子、兼秀さんにも話を聞いてみる。21歳から『美ら海』の仕事を始めた彼は、元々教育関係の仕事を志望していたそう。父・兼雄さんとつくる水槽への想いと、タッチプール事業で気づいたことを話してくれた。

「(兼秀さん)大学時代はアルバイトをきっかけに教育関係の仕事を考えていたのですが、父から『美ら海』の仕事をやってみないかと相談されて決意しました。家で趣味の水槽をいじっている父の姿を見ていたので、興味はあったんです。メンテナンス中も水槽を楽しんでいただけるよう“パフォーマンス”をするように心掛けていますが、塾講師のアルバイトで生徒に“パフォーマンス”をしていた経験が活きているように感じます」

「(兼秀さん)『美ら海』の仕事は魚の管理や水槽の維持ですが、水槽の向こうにいるお客様とのコミュニケーションが一番大事だと思いますし、好きですね! 父と共に、お客様の助けになれるような……何かを与えることができる会社にしたいです」

喜納さん親子が最近手ごたえを感じているというのが、『美ら海』のショールームに設置されたタッチプール。入場料は無料で、5つの水槽と(仕入れた魚を育てる)ストック水槽、タッチプールが開放されている。ヒトデやナマコだけでなく熱帯魚も泳ぐ“自然な海”を表現したコーナーを通じて、「海の生き物や自分たちの仕事を知ってくれれば」と考えているそうだ。

「(兼雄さん)小学校や幼稚園では『さかなのおじさん』なんて呼ばれて、水槽のメンテナンス中にヒトデを触らせてあげたりしています。前からね、夢だったんですよ。海の生き物に関わる施設をつくるのがね。今はタッチプールができたので、子供たちが海の生き物に興味を持つきっかけづくりは出来たのかなと思います」

「(兼秀さん)子供たちがウニやヒトデを触ったときの反応――テレビや画面の中でしか見たことがない生き物を触ると、凄く表情も明るくなって楽しそうにしてくれます。高崎に海はありませんが、タッチプールを通じて海の生き物を間近で見て・触れて、多くのことを経験してくれればと思います。入場料を取っているわけじゃないので、いつでも気軽に遊びに来てください」

定休日は水曜日と木曜日。水槽から水槽へ、日々多くのメンテナンスをこなす喜納さん親子はショールームを空けていることも多いそう。『美ら海』を訪れる際は、電話連絡を入れてからの方がよさそうだ。

遥か彼方に思われた“沖縄の海”を体験させてくれる『美ら海』の水槽。このまちにある癒しスポットでリアルな体験を楽しんで欲しい。

「手が回らなくて息子に声をかけまして」「気づいたら口説き落とされていました」と楽しげに会話する喜納さん親子。朗らかな雰囲気と真面目な姿勢がそっくりなんですよ。熱帯魚ファンのみなさまも、喜納さん親子に会いたいみなさまも。高崎の“海”を体験してみてくださいね~

アクアリウムのある暮らし。魚と共にすごすゆったりとした時間を"お試し"できるのが、喜納さん親子のショールームなのです

静かで温かな会話

自身もアクアリウムが趣味である兼雄さんと、お父さんの背中を追いかける兼秀さん。喜納さん親子が語る“水槽のある暮らし”の良さはどんなものだろうか。2人が語る水槽の魅力から、透明な水槽の中で静かに生きる魚たちの「おしゃべりする声」を想像してみよう。

「(兼雄さん)僕はもともと水槽が趣味でしたが、暮らしの中に魚がいると夫婦間の会話が増えるんですよ。犬を飼えば犬の話題が出るように、熱帯魚も夫婦で選んだり世話をしたり。人間だけだとギスギスすることもあるんでしょうけど、生き物がいるだけで非常に穏やかな気持ちになるんですね。設置した先のお客様の中に、定年後の趣味として夫婦で仲良くやられている方がいらっしゃいますが『魚の話でしょっちゅう盛り上がります』と聞いています。特に、海の魚は原色に近い鮮やかな色で見ているだけで楽しいので、おすすめです」

「(兼秀さん)水槽中のコミュニケーションを見るのも面白いと思います。魚同士は互いの顔を認識していて、まるで小さな社会ができているようなんです。魚の種類ごとにも大別できるんですが、気の強い子や臆病な子、好奇心が旺盛な子など個性も様々。顔に水をかけてくる子もいるほどです。もちろん、お客様の水槽に魚を追加するときには気を使う部分でもありますが……」

「(兼雄さん)『この魚も、あの魚も入れたい! 』と個性を考えないで水槽に魚を増やすと必ず失敗しますからね。大人しい種類の魚がいじめをしていたことも何回もありましたし、海の中では仲間と共に泳ぐ魚も狭い水槽の中では喧嘩が絶えないものなんです。嫌なものに出くわしても、海と違って逃げ場がありませんから。ストック水槽で魚同士のコミュニケーションを見ながら水槽を守っていくのが僕たちの仕事だと思っています。だから、ただ魚や機材を買ってお渡しすることは興味がないんですよね」

喜納さんが業務を“メンテナンス”中心にした理由は、魚同士のトラブルを避けるためであった。水槽の様子を定期的に確認し調整することは、熱帯魚にとってもアクアリウムを楽しむ人にとっても幸せなこととなる。水槽の中の“無音の世界”は想像以上におしゃべりに溢れた活発な社会なのだから。

「(兼雄さん)今後はスタッフを増やして、営業エリアを拡大して……水槽のある暮らしを広めていきたいですね! それからもっと大きな水槽の設置もしてみたいと思います。水族館のようにサメやカメが暮らせる3mや4mの水槽を見ていただくことで、僕が生まれ育った沖縄の海の青さや海で暮らす生き物たちが身近な生き物になれば嬉しいです。水槽のある暮らし、おすすめですよ」

「(兼雄さん)高崎市はふるさとの沖縄県に似ています。海を越えて渡ってきた僕たちと、楽しい時間を共有してくださる方がいっぱいいらっしゃるんです。フレンドリーで温かいこのまちの人へ、少しでも恩返しができればと思います」

“美ら海”とは沖縄の方言で“綺麗な海”を指す言葉。喜納さん親子がこのまちでつくりたかったのは遠い故郷の自然を再現した水槽なのだろう。兼雄さんがコメントをくれたように、故郷とかわらない温度でコミュニケーションをとれるまちであること……それはこのまちの“水質”を保つために必要な要素である。

まだ知らない地域の風景、あなたもぐっと顔を近づけてこのまちの温度を感じてみるのはいかがだろうか。水槽のなかでのびのびと泳ぐ魚が教えてくれた、暮らしを楽しむ秘訣があった。

水槽メンテナンスサービス 美ら海

住所
 オフィス:群馬県高崎市上中居町340-3
 ショールーム:群馬県高崎市上中居町297-1 (要事前連絡)
電話:027-381-5011
営業時間:10時~19時(水・木曜日定休)

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

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群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
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