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高崎市倉賀野町 高崎市の顔「だるま文化」の伝統とこれから

高崎市倉賀野町のだるま店『高林だるま』にて、だるま職人の高林さんにインタビュー。高崎市民なら知っておきたい「赤色のだるまが受け継ぐ伝統」と「カラフルなだるまが切り拓く新たなだるま文化」についてお話を聞いてみました。

2022.06.02

高崎市の伝統工芸

「だるま」と聞いてイメージする顔はどれですか? 凛々しく豪華な顔立ちの「高崎だるま」の世界を取材しました!

『高崎だるま』のまち

日本一のだるまの生産地、高崎市。赤く丸いからだに“鶴の眉”と“亀の髭”が特徴的な『高崎だるま』は、わがまちの誇る伝統工芸品だ。元旦の風物詩である『高崎だるま市』は多くの人で賑わい、「家内安全」「商売繫盛」「大願成就」と様々な願いを込めただるまが私たちの暮らしを見守っている。

高崎市でだるま作りが始まったのは200年以上前のこと。この地で紡がれてきただるま文化を知ると共に、これからの『高崎だるま』について考えてみたい。

 

取材時にサッと髭を描いてくれた高林さん。息を止めて見てしまう、迷いのない職人の筆運びに感動です!(ぜひ工房で見てくださいね)

『高林だるま』

高崎市倉賀野町のだるま店『高林だるま』にて、だるま職人の高林栄治(たかばやしえいじ)さんにお話を伺った。修業期間を経て独立・新規出店を果たした高林さんのお店は、赤色のだるまだけでなく、カラフルなだるまや『干支だるま』も人気を博している。

「全部同じように見えるだるまも、一つひとつ顔が違います。だるまについて知れば知るほど、見るのが楽しくなると思いますよ」と“だるま愛”を語ってくれた高林さん。だるま作りへの想いと高崎のまちで育まれる「だるま文化」についてお聞きした。

だるまと言えば!の高崎市。ついに『高崎で暮らす』でもだるま職人さんへインタビューすることが叶いました。奥深い伝統工芸の世界をお楽しみください~

だるま作りへの想い

下地を乾かしている途中のだるま。ちょっとマットな質感で、このままでも可愛いですね~

だるま職人の歩み

店舗前に出されただるまが道行く人の注目を集める、倉賀野バイパス沿いの店舗がオープンしたのは8年前。元々はだるまの生産が盛んな豊岡町のだるま店で修行をしていたという高林さんに、だるま作りの職人を目指したきっかけを教えていただいた。

「初めてだるま作りに関わったのは、同級生から『正月が忙しいから、手伝ってくれ』といわれて始めただるま屋のアルバイトでした。何となく知っただるま作りの仕事は、やっていくうちに楽しくなって。一つひとつ顔が違うだるまに魅力を覚え『自分が描いただるまを売ってみたい』と職人を目指し始めました」

独立するまでの修行期間は約15年。高崎市のだるま業界は家業を継ぐ人が多く、職人が新規で店を出すことは地域初の出来事だったという。

「知り合いのだるま店や群馬県達磨製造協同組合に力を借り、お店を出すことができました。自分の後も新たな職人が3名続けて独立し、仲間たちと協力しあうことでお店を続けられています。新規でだるま店をやることに、初めは不安もありましたが、後に続いてくれた人たちに経験を活かしたアドバイスができたので、挑戦してよかったなと思っています」

「新規出店であることを活かし、場所選びに力を入れました」と話す高林さん。大通り沿いの店舗では完成品のだるまだけでなく、乾燥中(棒に刺した状態)のだるまも目にすることができ、興味を惹かれて店舗へ立ち寄る人も多いのだそう。

「夫婦二人の実家に近く、色んなお客さんに見ていただける場所として倉賀野町を選びました。天気の良い日にだるまを外へ出しておくと、近くを通った方がふらりとお店に来て話をしてくれます。店内を見て『こんなに種類があるんだ!』と驚かれる方は多く、『こんなだるまは作れる?』と相談してくれる方も増えています」

 

チームカラーで塗られただるまたち。背中を見ると……部員の名前がそれぞれ入っています!!

だるまの“目”と“髭”

店内には白い下地が塗られただるまや名入れを待つ状態のだるまが所せましと並べられている。中には“スポーツのユニフォームを着ただるま”や“猫耳のついた猫だるま”などもあり、幅広いデザインのだるまを見ることができる。夫婦ともにだるま作りの職人だという『高林だるま』の特徴と、制作への想いを伺った。

「伝統的な赤いだるまは私が、可愛いカラフルなだるまはカミさんが担当して作っています。最近はお店のロゴを入れただるまや、野球部や陸上部のユニフォームを着せた記念だるまが人気ですね。(ユニフォームに入れる名前など)デザインが一つずつ違うことが多いので作る手間はかかりますが、卒団式でだるまを貰う子たちが喜んでくれると思うと嬉しくて、夫婦で楽しみながら作っています」

「うちは新規のだるま店なので、他のお店がまだ挑戦していないようなだるま作りにも積極的に取り組んでいきたいです。高崎はだるまが有名な地域ですから、他の地域に負けないような魅力的なだるま作りをしていきたいと思います」

今年の干支・虎のだるま。ホワイトタイガーも可愛いですね🐯

干支だるまを始めとする新たなスタイルのだるまは、今までの客層以外にもだるまの魅力を伝える商品として好調だという。パステルカラーの塗料や和紙を素材として組み込み作る可愛らしいだるま。こちらを見つめる目にぐっと心を掴まれる。

「干支だるまなどは自分が作ることもありますが、一番肝心な“目”はカミさんにしか描けません。ちゃんとこっちを見つめる“目”が描けるのは、カミさんの凄いところなんですよ」

「一方で、伝統的なだるま業界に恥じないよう、赤いだるまも一切手を抜かずに制作しています。こちらは特に“髭”が重要で、必ず私が描いて仕上げます。修業時代の店舗でも“髭”を描かせてもらえるまで10年ほどかかりました。独立にあたり様々なだるま屋の“顔”を見ながら試行錯誤してデザインを決め、とにかく細かく繊細に描くことを意識しています」

「どこのだるま店よりも綺麗に描く」という職人の意気込みは、だるまの眉や髭の本数に表れている。高林さんが初出店した「だるま市」では、ベテランの職人さんから「こんなに綺麗に描いたら他店のだるまが売れなくなるぞ、もうちょっと簡単に描け!」と嬉しい言葉を掛けられたそう。

「独立して8年、おかげさまで『綺麗なだるまだね』と選んで頂くことも増えてきました。だるま業界に入って何十年となりましたが、いつまで経ってもだるま作りは楽しいですね!常に『もっと綺麗に描きたい』とクオリティの向上を求めて制作しています」

コロナ禍で有名になった「アマビエ」のだるまもあるのだとか。各だるま店で作風が違っていて、集めてみるのも楽しそうです!

温故知新のだるま文化

だるまカラーでカラフルになった作業場。
「最初は塗料を落としていたんですが、カミさんが『だるま屋っぽくていいよ』と言ってくれて」とのこと!(たしかに)

文化を守り、伝える

「だるまがテレビや新聞に映ると、一目見てどこのだるま屋が作ったかわかるんですよ」と“だるま愛”を語ってくれた高林さん。カラフルなだるま作りに挑戦しながらも「最終的には伝統ある赤いだるまが良いねと言ってほしい」と夫婦は話す。高崎市民の方にぜひとも知っていただきたい、だるま作りの工程を教えて頂いた。

「だるま作りの工程の最初は、紙の型を作るところから始まります。卵を入れる紙パックのような素材でできた型は専門の型屋さんが作っていて、中は空洞になっています。そこに“七転び八起き”のだるまになるよう『ヘッタ』という瓦と同じ素材でできたおもりを取り付けます」

「その後、胡粉を混ぜた白い下地、だるま専用の赤い塗料を順に塗って仕上げていきます。『ヘッタ』には穴が空いているので、だるまを串に刺して乾かしながら作業をすることが可能です。小さなだるまなら一気に塗装できるので、1週間くらいで100個ほどを仕上げることができますよ。型が紙でできているのでしっかり乾燥させることが重要です。これからの梅雨時期には、だるまが中々乾かなくて大変です」

「夏の暑い時期には塗料が垂れ、冬の寒い時期には塗料が固まる」と気候に左右されるだるま作りは、その日の様子に合わせて“職人の勘”で材料を調整し制作されている。白い下地や赤い塗料には紙型が崩れないよう、硬く保護する役目もあるのだそう。サイズが大きなだるまほど塗装作業は力仕事になるため「特大サイズのだるまは特に重いので、かなり気合いを入れて色付けしています」と高林さんは話す。

「髭を描く時期は、ずっと動かず作業をしています。とても集中力を使うため、その期間だけで3~4キロは痩せますね。筆がノッている時には不思議と全く疲れないので、だるまを手にするお客様のことを考えて作っています」

 

作り手と買い手の双方が納得するまでサンプルを作るという高林さん。美しいだるま、喜ばれるだるまをどこまでも極めていく心を感じました……!

新たな魅力に気付く

最後に高林さんが語るのは「高崎のだるま文化」のこれからについて。市内のだるま業界では職人の高齢化が進み、年々だるま屋が減少しているのが現状だ。高林さんは学校や地域の人を対象に「だるま作り体験」を行い、広くだるまに親しんでもらおうと活動を続けている。

「近年は一年に一件のペースで、職人さんが亡くなるお店や廃業する店舗が続いています。業界の平均年齢は60~70歳と高いので、若い職人さんが増えることに繋がればと、体験会や新たな形のだるま作りに取り組んでいます。小さな頃、両親に連れられて行った『だるま市』は凄く華やかなお祭りとして印象に残りました。『沖縄のシーサー』のように、『群馬/高崎といえば、だるま』と思ってもらえるよう頑張りたいですね」

取材に伺った際には「だるま専用の黒い塗料が廃盤で、新たな塗料を色々と試しているんです」と作業風景を見せてくれた高林さん。各だるま店同士も協力し合いながら『高崎だるま』は作られている。

「高崎市民の方でも、だるまが何でできているのか、どうやって作られるのか知らない人は多いです。せっかく『高崎だるま』や『だるま市』があるまちなので、興味をもって知っていただけたら嬉しいですね。だるまの作り方や歴史を説明して、実際に顔を描いてもらう体験をさらに広めていければと思います。自分で作る世界で一つだけのだるまが良い思い出として、次の世代へだるま文化が伝わるきっかけになってほしいです」

だるま作りには作り手の性格が出ると話す高林さん。小学校で体験会を行うと、5分で仕上げる子もいれば、1時間かけて髭を描く子もいるという。だるまを自分で作ることで、今まで何気なく見ていただるまを見る目が変わるだろう。

各店舗の違いが分かる貴重な資料!並べてみてみると、違いがよくわかりますね。
高林さんが作られただるまはどれかわかりますか?

こちらは群馬県達磨製造協同組合が製作した各だるま店の写真一覧。話を聞いた後に見てみれば「立派な髭の怖い顔をしただるま」や「柔らかい表情の“うす顔”なだるま」などの個性が見えてくる。

「コロナ禍になり、インターネットでだるまを買う人も増えました。そういう時代なのかもしれませんが、顔を見て、話をしながらだるまを買ってほしいと思います」

人の手で作られるだるまには、その内側に熱い想いが込められている。知れば知るほど奥深いだるま文化の育つこの街で、ぜひあなたの“推しだるま”を見つけてほしい。

 

高林だるま

住所:〒370-1201
   群馬県高崎市倉賀野町4615-6
電話:027-384-4693
メール:pygmie@docomo.ne.jp

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

どうもこんにちは、群馬県でフリーライターをしている西(編集長)です!
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信していきます。

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