高崎市問屋町 音楽を愛する税理士が語る、理想の暮らしへの歩み方
高崎市問屋町の『ひかり税理士法人』代表・高橋正光さんのインタビュー。高崎生まれ高崎育ちの税理士が、仕事と出会うまでの“意外な話”を聞かせてもらった。「音楽」と「仕事」……二つの分野を軸に、このまちで暮らす高橋さん。理想とする「大人も楽しめるまち」への歩み方を教えてもらうとしよう。
2019.04.12
高崎市と中小企業
高崎市を支える力
活気ある企業が集うまち、高崎市。日本の企業数の9割以上が中小企業と言われているが、高崎市も商業・工業・サービス業を中心に特色ある中小企業が競い合い、賑わいをみせている。
そんな中小企業を支える力は数多くあれど、「税と会計のプロフェッショナル」と言われて思い浮かぶのは税理士業だろう。企業経営者の良き相談相手であり、相続の時期を迎えた家族にとっても身近なサポーターである彼らのイメージ――数字、書類、お金、手続き――とは違った側面から、このまちの税理士の姿に注目してインタビューを行った。
『ひかり税理士法人』
高崎市問屋町にある税理士事務所『ひかり税理士法人』。34年間税理士として活躍し続けている、代表の高橋正光(たかはしまさみつ)さんが取材に応じてくれた。「税理士という仕事を知ったのは、就職活動直前の時期でした」と話す高橋さん、仕事と出会うまでの“意外な話”を聞かせもらうとしよう。
音楽のまち・高崎で生まれ育った税理士の「音」と「数字」との歩み。高橋さんが語る「大人も楽しめるまち」としての高崎の姿を、思い描いてみる。
今回は“税理士”の仕事内容に加えて、音楽のまちの未来についてもお話を伺ってみました!記事の途中に室内管弦楽団「カメラータ ジオン」へのリンクもありますので、春の演奏会日程もチェックしてみてくださいね!
道をひらく
音を知る
高崎市貝沢町。『ひかり税理士法人』の社屋がある問屋町の隣町で生まれ育ったという高橋さん。子供時代の話を聞くと、クラシック音楽が好きなお父さんと共に「群馬交響楽団」の演奏会やレコード鑑賞を楽しんでいたという。暮らしの中に“音”が溢れるまちならではの思い出と、税理士を志すまでの道のりを伺った。
「幼い頃の夢は、音楽家。フルート奏者になることでした。父がクラシック好きだったことをきっかけに、中学校から群響(群馬交響楽団)の先生に、高校からは東京の音楽大学の教授についていました。全国から集まった生徒同士、『俺は上手い』と皆が思いながら切磋琢磨して。本気で音楽の道に進もうとしていたんです」
「ところがある日のレッスンで、全くレベルが違う生徒の演奏を聴いてしまって。『世界的なフルーティストになりたい』と思って一生懸命やっているからこそ『世界的なフルーティストになるのは彼だ』と気付いてしまったんですよね。高校3年生の12月に挫折、高崎の予備校で一浪して“オーケストラのある大学”へと進学しました」
音楽の道を諦めたものの、大学時代はオーケストラの活動に積極的だったと話す高橋さん。進路を決められないまま、気付けば就職活動の時期が迫っていた。長い春休みに地元高崎のまちへ帰郷。そこで、税務署員から税理士へと独立したお父さんの仕事を間近で見る機会がおとずれる。
「父が農協の顧問として、組合員さんの確定申告を一手に引き受けていた時のことでした。僕はただ、書類でいっぱいの鞄をもってついて行って、大勢のお客さんの相談にのる父の姿を見ていました。当時は農地の開発ブームで、土地が売れたお金や税金のことで悩みや不安を抱えたお客さんが多く――父は一人一人のお客さんの話を聞きながら、パッと計算をして『こうなるので大丈夫ですよ』と説明するんです。どのお客さんも『ああ、よかった』と喜んでいたのが印象的でしたね。中には後から収穫した野菜を届けてくれる人もいたほどです。税理士の仕事に対して『喜ぶお客さんの顔が直接見える』ことや『役に立った結果が見える』ことがいいなと思うようになりました」
「今でも群響の定期演奏会を聴きに行くなど、音楽は『人生を楽しむ趣味の1つ』として大切にしています」と高橋さん。お父さんとの思い出、まちがくれた音楽に触れる機会は一生モノの贈物になったようです♪
数字を知る
人と向き合い、支える仕事だからこそ感じる“ありがとう”の重みに魅力を感じた高橋さん。お客さんと直接話すこと、相談されること、役に立つこと、喜んでもらうこと……気づけば、税理士を目指す気持ちが芽生えていたという。大学を卒業後は東京の会計事務所に勤め、29歳で税理士の資格を取得。新宿に事務所を構え、独立を決めた。
「昭和60年から平成2年までのバブル期、ちょうど面白い時期の東京で仕事をしていました。若くて、元気で、忙しくて、楽しくて。オフィスの近くに銀行があったので、そこの営業マンと一緒に融資の相談を受けたり、相続対策のセミナーをさせてもらったこともありましたね。夜遅くまで仕事して、飲みに行って、バブル時代の働き方でした」
「その後、バブルが終わるのと父が亡くなるタイミングが一緒で……東京の事務所を友人に預け、高崎の事務所を引き継ぎました。地元に戻りたい、という想いもあったんです。まだバブルの余韻が残るこのまちで、若手の税理士たちと共に勉強会を開いて、東京で培ったノウハウや将来必要になってくる税理士の役割について話をしました。ふるさとのまちは住み心地がよく、楽しんで仕事をしていました」
「それまでの暮らしは、何か物足りないところがあって」と高橋さん。東京の中でも比較的緑の多い地域で暮らしていた時でさえ、風景の中に寂しさを感じていたという。帰郷した後に気が付いたのは“山のある景色”の価値。赤城山、榛名山、浅間山といった個性豊かな山々から伝わる、自然の豊かさや四季の移ろいがこのまちで暮らす魅力の一つになっていた。
「春には春霞、秋には紅葉。冬に山を見れば『スキーの季節だな』と感じたり、澄んだ空気や雲がかかっているのを観賞したり。何気なく天候や四季を感じながら暮らすことの良さが、わかったんですよね。『この山が見えるまちが、ふるさとだ』というか。帰ってきたな、と強く思った瞬間でした」
「それでも、10年以上離れていたふるさとは、初めは“知らないまち”のようでした。同級生やご近所の人、勉強会の仲間――社会や地域というのは、小さな人と人との繋がりですから、少しずつ仲間になっていくような感覚で地域に根差していきました。高崎のもう一つ良いところは、フレンドリーなまちだということですね。昔から色んな新しい人が入ってくる“交流都市”だったことや、まちの大きさがちょうど良いこともあって、自然と受け入れてくれるまちの風土を改めて感じました」
この土地に受け継がれてきた“開かれた地域性”を、高崎の魅力として感じ取った高橋さん。旧友、子供を介した出会い、仕事を通じた繋がり、同じ志をもった人同士や仲間……小さな繋がりを大事にしながら、地元税理士として活動を続けていった。
国、県、まち、友人、家族……人の集まりには様々な名前が付いていますが、「自分」と「相手」のコミュニケーションであることは変わりませんね。「地域の話なんて、関係ない」と思わずに、まずは目の前の人との繋がりを大事にしながら暮らしていきたいものです
まちに響く音
目的地
そんな高橋さんの税理士事務所『ひかり税理士法人』には、他の税理士事務所にはない“仕事”のスタイルがあるという。まちの活気を支えるプロフェッショナルが目指すものは、一体何なのか。税理士を志したきっかけである「お父さんの姿」や「東京での経験」から始まった、“独自の取り組み”にかける想いについて聞いてみた。
「父の仕事を見た時から、税理士としてずっと大事にしているのは『仕事をして、喜んでもらうこと』ですね。やっぱり、お客さんが喜んでくれた時が一番嬉しいんですよ。とはいえ、税理士の本来業務である税務や会計だけをしているのでは不十分だと感じていて……“数字”がわかる専門家ならではの視点で、『積極的な経営サポート』を行っています」
中小企業庁の調査を見ると「経営者の相談相手」に最も選ばれているのは「税理士や会計士」。そこにはもちろん、「“数字”を通じて会社や経営者のことを分かっているから」という要因が考えられるだろう。しかしながら、高橋さんが重要視しているのは“数字以外”の部分だという。『将軍の日』と名付けられた中期経営計画策定サポートを実施することで、“人”や“教育”、“環境”といった数字で表せない部分の支えになっているそうだ。
「経営者を戦国時代の“武将”に例えて、“自軍と戦況を見極め、戦略を練るための一日”を持ってもらう取り組み――『将軍の日』をお勧めしています。自身の会社の状態や業界のことを整理し、5年後のビジョンを策定してゆくための時間が経営者には必要なんです。特に中小企業の社長は、“最前線で戦う人”でもありますよね。日常業務から離れる日をつくることで、本当に目指すべき場所を明確にしていきます」
高橋さんは「カーナビ」を想像してほしい、と説明をしてくれた。“目的地”を入れるとルート検索をしてくれるシステムは、常に“現在地”と“目的地”が明らかであり、様々な道順を示してくれる――例え進む道を間違えてしまっても、今いる場所と向かうべき先がわかれば何度でも挑戦できるのだ。
「面白いことに、会社を良くするために重要なのは“数字”じゃないんですよ! 人事・教育・理念・ビジョンといった総合的なものが重要で、方向を決めればどんな会社も確実に成長していきます。毎月、担当のスタッフと経営者で『目標への道があっているか』をチェックして……そこで初めて、数字という指標を使うんです」
固い信頼で結ばれた“税理士スタッフと経営者”が、二人三脚でゴールへ向かっていく姿。高橋さんが最後に話してくれたのは、経営者としての自分の喜びについてだった。
「“お客さんに喜んでもらう”ことが嬉しいのはもちろんですけど、僕も経営者として“社員に喜んでもらう”ことは最終目標にしているんです。お客さんから信頼されながら、仕事を活き活きと楽しむスタッフの姿……働くことの喜びを感じてこそ、お客さんの“健全経営”が真にサポートできるんだと考えています。ひとつながりなんですよ。お客さんが喜んでくれて、スタッフも嬉しくて、僕も嬉しい。そういうビジョンで、仕事をしています」
今年、高橋さんの会社は税理士法人設立の10周年を迎えたそう。社員旅行やオフィスに「くつろげるカフェスペース」をつくるなど、自身の経営においても“人”や“環境”といった数字でない部分を大切にしている。美しい旋律が、集まることでより感動を呼び起こすハーモニーとなるように、「経営者と税理士」「経営者と社員」といった“人と人がうみだすもの”を大切に想う高橋さんの気持ちを感じた。
大人も楽しめるまち
今後も、高崎のまちで暮らしていきたいと話してくれた高橋さん。冒頭でも紹介した通り「音楽好き」の彼らしい、高崎のまちで描く理想の暮らしとは何だろうか。今年オープンを控えている『高崎芸術劇場』や暮らしの中に溢れる文化に思いを馳せながら、高橋さんが語る「大人も楽しめるまち」をイメージしてみよう。
「今でも音楽、フルートは趣味として続けていて、“室内楽”のオーケストラの立ち上げもお手伝いしています。もちろん税理士として財務や会計を応援しているということもありますが、一個人として『音楽のまちに根差したクラシックを、もっと広く楽しんで欲しい』という想いがあるんです」
「理想としているのは『大人も楽しめるまち』ですね。最近は駅前がにぎやかになってきて、“若者”が集まるようになってきました。音楽、美術、文化、食……色んな世代が、それぞれに楽しめるまちだと良いなと思います。僕ら“大人”の世代でも、ゆったりと楽しめる部分があって……例えば、新しくできる芸術劇場は駅の側に立ちますから、電車の利用者が増えることで『幅広い世代』が『色んな楽しみ方』をみつけられればと思います」
多くのコンサートに足を運ぶという高橋さん。電車を使うことで、ゆったりとした“大人の楽しみ方”――コンサートホールのホワイエでワインやコーヒーでリラックスしたり、演奏の余韻はそのままにまちへ出て食事をすること――ができるようになるのではないかと話をしてくれた。車社会のこのまちも、新たな時代を迎えているのかもしれない。「年齢/性別/人種に関係なく楽しめるまちへ」――これからの暮らし方に期待したい。
「楽しく住めるまちは、自分たちでつくっていかないとですね。誰しも、年を取っていきますから。ものぐさがって家にいるばかりではダメで、お店に足を運んで、私たちも成長していかないと。毎日じゃなくても、皆で少しずつ輪を広げていければと思います。それぞれの人がそれぞれの立場、好きなことで少しでも貢献できればいいですよね」
自ら一歩外へ出て、暮らしを楽しんでみる。税理士として、音楽を愛する市民として考えてくれた「このまちの未来の話」は、あなたにどう響いただろうか?
高崎で暮らす私たちの“目的地までの道のり”は違えども、まちの未来は同じはず。それぞれの場所から、それぞれの力で、このまちの明るい未来を目指していこう。
ひかり税理士法人(高崎事務所)
住所:群馬県高崎市問屋町4-7-8 高橋税経ビル
電話:027-361-5568
この記事に関連するメンバー
西 涼子
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群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
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イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。
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