高崎市藤塚町 ナチュラルフード・コーディネーターが伝える“豊かな暮らしを育むレシピ”
ナチュラルフード・コーディネーターである茂木奈央美さんのインタビュー。ストレス社会に生きる今の私たちに伝えたい想い、情報社会の今だからこそ必要な「食」との向き合い方について語っていただきました。ワクワクする暮らしに重要なのは、イメージの力。暮らしを豊かにする“1手間目”に取り掛かってみませんか?
2019.05.20
高崎市と食
まちに溢れる食のちから
高崎市と食。生活の3要素「衣食住」にも含まれている「食事」は、このまちの暮らしを語る上でも外せない。特に健全な食生活と食を通じた学び――「食育」は近年注目されている考え方であり、高崎市は『高崎市第3次食育推進計画』として朝食摂取率の向上や地産多消・郷土料理の推進などに取り組んでいる。
箕郷・榛名地域の果物や、山地の高原野菜、露地栽培の地元野菜など多く“地域の味”をもつこのまちでは、食を取り巻く多くの取り組みや課題――生産者の挑戦、流通の課題、まちで催される食イベント、食と絡めたまちのPR――に興味を持っている人も多いだろう。高崎のまちでより豊かに暮らすために。日々の食について考えてみるとしよう。
NOURISH CHIC
今回、このまちの食を共に考えてくれるのは、NOURISH CHIC(ノーリッシュシーク)のナチュラルフード・コーディネーター、茂木奈央美(もぎなおみ)さん。レシピ開発をメインに活動する食のスペシャリストであり、料理コラムの連載やフード写真の撮影・提供などの活動を行っている。
食に関わる全てを“コーディネート”する彼女が教えてくれる“暮らしと食のいい関係性”とは何だろうか? 茂木さんは「1品/1手間増やすことができれば、2品作るのも3つ手間をかけるのも同じなんですよ」と話す。ストレス社会に生きる今の私たちに伝えたい想い、そして、情報社会の今だからこそ必要な「食」との向き合い方を聞けば、ワクワクする暮らしの“1手間目”に取り掛かりたくなることは間違いない。
GWも終わり、そろそろ「食育月間」の6月が近づいてきましたね!
今回は食のスペシャリスト/ゼネラリストの茂木さんにお話を伺ってみました。綺麗な写真と心に染み入るインタビューは、2度も3度も楽しめる内容となっておりますよ~
何のために食べるのか
ナチュラルフード・コーディネーターとは
「目玉焼きを想像してみて? フライパンでたまごを焼いて、味付けに塩コショウ……そのままでも美味しいけれど、パセリも足してみたらどうでしょう。そのままより、もっと美味しそう! 『もうちょっと緑を増やしたいな』という気分になればサラダを添えてもいいし、『赤色が欲しいな』と思えばトマトを盛り付けても可愛いですよね。他にも、パンを焼いたりスープをつけたり……ほら、どんどんテンションが上がる食卓ができると思いませんか?」
何の変哲もない“目玉焼き”が、あっという間に“フォトジェニック”な食卓をつくる――インタビューの冒頭で、茂木さんは“目にも舌にも体にも”美味しい食のイメージについて語ってくれた。「食事は見た目が8割」と言われるように、美しい盛り付けや色彩・温かな食卓の風景もおいしさのもと。ナチュラルフード・コーディネーターである彼女の使命は、広い意味での食のおいしさや大切さを伝えることである。
「フードコーディネーターって、ふわふわして捉えにくい言葉ですよね。私みたいに企業と組んでレシピを提案したりオリジナルスパイスを作る人もいるし、料理家や研究家、評論家、教室の先生もいる。広く食に関わる仕事なんですよ。私は特に、自然食――添加物をあまり使わないで、旬のものを美味しく食べることを提案したり、先ほどの“目玉焼き”のように心も満たす食事をお伝えしています」
「レシピや写真の発信は、SNSやブログ、料理のコラムを連載しているサイトなどで行っています。『そこまで料理に手間かけられないよ~』『食材を揃えるのが大変そう!』『この食材どうやって使うの?』という方向けに、なるべく、よくわからない横文字の食材や手間のかかる調理方法を必要としないレシピを心掛けていますよ。Instagramに乗せているサラダやキッシュも、よく見ると高崎産の摘み菜が入っていたり、普段と違う野菜の切り方をしているだけだったり。ちょっとした料理のコツで、ぐんと食卓が楽しくなる……そんなヒントを発信しているんです」
食の、そして暮らしのヒントが満載の写真は記事下部に数点掲載いただいております!はらぺこ必至の一品たち、ぜひご覧くださいませ
おすすめの”見方”は、お皿以外のアイテムに注目すること。素材の姿、カトラリーの数、添えられた飲み物、背景の雰囲気……何気なく置かれた布巾から、「オーブンから出したばっかりの、アツアツのお皿」なんてことを想像して”見て”くださいね!
食と向き合う
茂木さんが活動をはじめたのは5年前。以前は旦那さんと共に観葉植物や多肉植物のコーディネートやディスプレイをしていたという。「徐々に“食”へとシフトしていきました」と話す茂木さんの、食の道へ進んだきっかけについて聞いてみた。
「ハーブや多肉植物の『寄せ植え教室』を開催していたんですが、もともと料理が好きなこともあって、イベント中にお茶や食事を出していました。ナチュラルフード・コーディネーターの勉強をし始めた時も、『私がやりたかったのは、これだな』という感じで迷いはありませんでしたね。資格を取った後、レシピ開発の依頼をいただいたり本を出させてもらったり。初めて5年、あっという間の展開に驚きつつ、仕事の楽しさに感動しています」
「私ね、食べるのが好きなんです。美味しいものを食べた時に『またこのお店に行こう』っていう人と『自分でも作ってみたい』っていう人がいますけど、私は作りたいタイプ。自分流にアレンジ、じゃないけど『好きなものと好きなものを足して、もっと美味しくしちゃおう』って考えています。実験的なのが、好きなんですね」
茂木さんはニコッと笑って「昔は小さなミルクパン一つで、生活してました」と驚きの告白をしてくれた。鍋でお米を炊き上げて、器によそった後にお味噌汁を調理する……一見不便そうな生活も彼女は「楽しんでいました」と話す。
「目の前にあるものでやりくりするのが好きですね。美味しいレストランの食事を『作りたい』って思った時も、レストランの食材じゃなくて、今自分が持っている食材で『美味しい』って思えるものをつくりたい。レシピに難しい食材や手間のかかる調理方法がないのもそんな理由からです。ストイックになりすぎないこと、楽しんで食に関わることを大事にしています」
「私はナチュラルフード・コーディネーターですが『自然食以外の食事をするな』とは言いません。全部の食材をこだわっていると相当大変だし、コストもかかるし……私だってお菓子は好きだから、ポテチを食べることもありますよ。人によって美味しいものって違っていて、お菓子が好きな人、オーガニックが好きな人と“人それぞれ”。自分にとって居心地のいい着地点を探すことが一番です」
「食事の栄養価だけ見てバランスがとれていても、食材探しに翻弄された末、食べることに疲れて心のバランスがとれなかったらダメでしょう?」と茂木さんは問いかける。確かに、「オーガニックでなければいけない」という強迫観念をもって食事をしていては息が詰まってしまうだろうし、「体に悪いのを知りつつ、インスタント食品ばかり食べる」のもどこか罪悪感が残りそうだ。心も体も納得する食事――そんな自分だけの「食との向き合い方」を見つけて欲しい、と茂木さんは言う。
「生まれた時からコンビニもファミレスもある時代、不自然な食事をしていても気が付かないことがあります。だからこそ私は『週に1~2回、自分で食事を用意して心身をリセットする』ことを提案しています。知らず知らずのうちに溜め込んでしまったものを、デトックスしましょうって。『あなたは、あなたが食べたものでできている』というように、食が遠因の不調がでないよう、なるべく不自然でないものを食べてほしいと思うんです」
茂木さんは、インタビューやWSの中で「健康のために、この食材を使った方がいい」とは言わずに、「○○っていう特徴があるよ」「○○の味が好きなら合うかも」とアドバイス
1人1人違う”美味しさ”に対して、真摯に向き合う姿勢を強く感じた編集長です
暮らしと食事
高崎の食で暮らす
高崎市藤塚町の自宅を中心に、県内県外問わず活動を続けている茂木さん。このまちで暮らしているからこその発見や、県外の人と関わる中で見つけた課題があるという。食のプロフェッショナルの目線から、高崎の食について話をしてくれた。
「仕事を始めてから思うのは、群馬県や高崎市というだけで“線を引かれる”ことがあるということ。皆、高崎に何があるのかわからないから、来てくれない。確かに田舎だし、都会ぶる気もないけど、何もないわけじゃないのにね。凄く美味しい地元の食材があったり、いいお店や魅力もあるけれど、まだまだアピールが足りないんだなと感じています」
「それから『高崎でこんな食材も手に入るの?』ってよく言われるんですよ。このまちの若い農家さんたちは、向上心もあって研究熱心。県内の農作物が集まるこのまちは、時々ものすごく面白い野菜や珍しい種類の農作物――紫や黄色の白菜だったり、コールラビという地中海地方原産の根菜だったり――を見つけることができるのに! 田舎ならではの楽しみというか、偶然であえる喜びを感じます」
「だからこそ、食に関わる人たちに高崎育ちの食材を使ってほしいと思います。需要を作って『こんな食材もあるんだ』というのを知ってもらう、私のような(発信をする)人が『高崎で育った食材で、こんなオシャレなワンプレートができましたよ』って広めていく。例えば私は、下仁田ネギで『お豆腐とネギの味噌グラタン』や『下仁田ネギのポタージュ』をつくりました。すき焼きや鍋物しか思い浮かばない食材に、面白い食べ方や気軽に家庭で取り入れられる形を消費者目線で提案していけば……『群馬で、高崎で買えるらしいよ、行ってみようか』って繋がるんじゃないかなと思っています」
食材の産地と距離の近い生活を楽しむ、茂木さんの暮らし方。地元野菜を扱う食料品店やスーパーの「生産者の顔が見えるコーナー」を覗いてみると、思わぬ“地域の味”にであえるかもしれない。新たな味に挑戦するのを不安に思った時は、茂木さんのレシピを見て欲しい。あなたが食を楽しむためのヒントが、必ず見つかるはずだ。
Imagine
「よく『お店は出さないの?』って言われるんですけど……」と茂木さん。仕事の中で今後挑戦してみたいことについても聞いてみた。彼女のテーマである“The tasty imagination world”への想いを知るとともに、心豊かな暮らし方についてイメージしてみるとしよう。
「私がやりたいのは、食を中心に生活スタイルや暮らし方を提案することなんです。例えばそれが、器を選ぶことだったり、テーブルの上をスタイリングすることだったり、美味しそうな写真を撮ることだったり、料理教室をすることだったりに繋がるんじゃないでしょうか。お金をかけなくても心が豊かでいられる食事はできますし、自分の体に染み渡るような食事ができれば自然と笑顔になれますよね。“The tasty imagination world”……想像してみてください、美味しい食事の味だけでなく、一緒に食事をする人の笑顔や食卓の風景、お気に入りの雑貨、可愛い服を。その感情は全部、心を豊かにするものだと思います」
NOURISHには、「育む」という意味を込めたと話す茂木さん。食を充実させることで、皆がそれぞれの暮らしや心を大切に育んでほしいという。『あなたは、あなたが食べたものでてきている』――おそらくこの格言をつくった人は、食が私たちの心を育むということも知っていたはずだ。
「イベントとして料理教室を開催することもありますが、セミオーダーの料理教室もしています。『お隣さんからジャガイモをもらいすぎちゃって』と言われればジャガイモ料理の教室を、『子供の誕生会をしたいんです』と言われれば子供が好きそうなパーティー料理を教えます。それから『何かやりたい』っていう人にも、何かやるからおいでって。全ての教室はお家で再現できる料理を心掛けています。皆さんの『家族に美味しい料理を食べて欲しい』『自宅の食卓をカッコよくスタイリングしたい』『いつもの食器で、テンションがあがる料理をつくりたい』という想いをカタチにするお手伝いがしたいと思っています」
暮らしと食のいい関係性を考えるとき、食を取り巻く人々や食以外の楽しさにも目を向けることが重要になってくる。いつもと違う道を歩いてみること、週末に手作りのお菓子を作ってみること、お気に入りの雑貨を飾ること、誰かの笑顔のために行動すること――ナチュラルフード・コーディネーターの彼女が教えてくれているのは、そうした“1手間”かけた暮らし方なのではないか。高崎のまちでより豊かに暮らすために。まずは想像してみるとしよう。
NOURISH CHIC ナチュラルフード・コーディネーター 環境アレルギーアドバイザー 茂木 奈央美
「日常と非日常を楽しむ食事」の中から生まれる創造力。
毎日の生活シーンを心豊かに。
HP https://nfcnaomi.wixsite.com/nourishchic
FB https://www.facebook.com/thetastyimaginationworld/
Instagram https://www.instagram.com/nourish_chic/ @nourish_chic で検索!
★レシピはこちらのブログorサイトにて更新中!
ブログ http://naonogohan.blog.fc2.com/
michill https://michill.jp/writer/moginaomi
★今回は特別に、茂木さんの“一品”を写真でご紹介! 高崎産の食材溢れる写真をご覧になってみてくださいね
- 自家製ルウで芽キャベツとあさりのチャウダー(高崎産:小麦粉)
- 上州地鶏の照り焼きとマッシュポテト(高崎産:じゃがいも)
- カポナータ(高崎産:各種夏野菜)
- 厚揚げを使った麻婆豆腐(高崎産:厚揚げ)
- モッツァレラチーズとそら豆のカプレーゼ(高崎産:チーズ)
この記事に関連するメンバー
西 涼子
どうも、こんにちは!
群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。
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