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高崎市山名町 学校×保護者×地域 新たな時代を創るPTAの取り組み

今回は、高崎市南八幡中学校PTA会長の高井俊一郎さんへインタビュー!高崎市山名町の神社「安産・子育ての宮 山名八幡宮」の神主であり、群馬県議会議員であり、三児の父である高井さんに、学校×保護者×地域の取り組みをお話いただきました。

2023.01.23

高崎市と教育

懐かしい母校だ、という方もいるかもしれません 南八幡地域へやってきました

教育に力を入れる高崎市。「豊かな心と感性が育つまち」を目標に掲げ、地域と教育を密接に捉えた施策を進めている。力を入れているのは行政ばかりではなく、これまでに当サイトでは民間団体の取り組みや個人のライフワークとして真剣に教育へ向き合う人々の想いを紹介してきた。時代の“変革期”が訪れる今、これからどのような教育や教育環境が求められてくるのだろうか。

高崎市南八幡中学校PTA

まちづくりプレイヤーとして、群馬県全域で活動する高井さん PTAとしての活動で新たに見えてきたことをお話いただきました!

今回取材させていただいたのは、高崎市南八幡中学校PTA会長の高井俊一郎(たかいしゅんいちろう)さん。普段は高崎市山名町の神社「安産・子育ての宮 山名八幡宮」の神主や群馬県議会議員を務める傍ら、三児の父としてPTA活動へ積極的に取り組んでいる。

「高崎市のPTAで始まりつつある、“変化”を知ってほしい」と語るのは、PTAと学校、そしてPTAと地域の取り組みについて。子どもたちの成長を願う保護者の想いから始まり、高崎のまちづくりへと繋がるストーリーをお聞きした。

PTAを始めたきっかけ

取材で山名八幡宮へ 平日の日中は家族連れの参拝者がゆったり過ごしていました

子どもたちの健やかな成長のため、保護者と学校、地域が連携して協力し合う組織「PTA」。しかしながら、現代ではPTAに対して否定的な意見も多く、PTAをやりたがらない保護者も多い。「私もこれまでは、PTAをやろうと思っていませんでした」と話す高井さん。南八幡中学校でのPTA活動をはじめたきっかけから伺った。

「『PTAをやろう』と思ったきっかけは、コロナ禍で学校・地域・保護者の繋がりが希薄になっているという実感があったからです。ここ数年は学校や地域のイベントが減り、保護者同士が顔を合わせて話をする機会が少なくなりました。すると、例えば学校で子ども同士がケンカした時に、互いの家庭を知らないから、必要以上にギクシャクしてしまうんですね。日頃コミュニケーションを取っていれば解決できることも、地域内のつながりがないことで難しくなっていると感じました」

編集長のおすすめは、本殿の周りをぐるりと散歩するコース 色鮮やかで美しい神獣の彫刻も見られますよ~

「また、普段神社で見る子どもたちの様子からも危機感を抱いていました。一人で遊びに来て夕方まで境内で時間を潰している子がいたり、毎日同じ服装で遊んでいる子がいたり……貧困やネグレクトといった“家庭の問題”が深刻化しているんだと思います。コロナ禍だからこそ、地域のネットワークを再構築する必要を感じ、子どもの保護者として地域に関わってみようと考えました」

PTAへ参加すると、一年目から副会長を担当することになったという高井さん。PTAの会議や活動の中では、歯がゆい思いをすることもあったという。

「一年目を体験してみて思ったことは『もっとPTAって、上手に使えるんじゃないか?』ということです。人手も予算もある組織は今以上に活かすことができるはずだと思いましたし、ちゃんと活用するためには“今の時代に合った形に変化させること”が重要だと感じました。やっぱり、やりたくない人が受け身のまま形式的に働いても、本人も嫌だろうし、周りの人にとっても良くないですよ。まずは楽しく働ける環境が必要で、ゆくゆくは能動的に動けるPTAになると良いなと思いました」

PTAは何のためにあるのか?

「保護者同士で話をしてみると、面白い人ばっかりなんですよ」 地域のつながりの中で、子どもたちを見守り育てていきます

二年目は南八幡中学校のPTA会長として本格的に関わり始めた高井さん。保護者の立場から一歩踏み込み、学校と関わって見えてきたことを教えて頂いた。

「PTA会長として取り組んでいることは二つあって、一つは『学校とPTAの関係性を強くすること』です。今は学校の先生も忙しくて、子どもたちや地域のために働きたい想いはあっても、できない先生も多いと思います。学校とPTAが協力すれば、保護者で作る組織だからこそ力になれることがあるんじゃないでしょうか」

「もう一つは、PTAという組織を“楽しくすること”です。保護者が嫌々やっているとなれば、学校の先生も相談できないですよね。だからこそ、PTAに参加する保護者同士の関係作りに取り組みました。初めは知らない人たちが集まっている場なので、自主的に動けるような空気ではなかったのですが、意欲のありそうな人や場を盛り上げてくれそうな人に働きかけたり、話をする場を設けたりすることで、PTAの仕事をチームでできるような繋がりが少しずつ生まれました。全員とはいきませんが、自分のキャラを出して力を発揮してくれる人は確実に増えたと感じています」

一人では叶えられないことも、みんなと一緒ならできるかも。

高崎市内の学校の中には、同じようにこれまでのPTAの在り方から“変化”を目指す組織もあるそうだ。例えば倉賀野小学校では一度PTAを解散し、「やりたい人が、やれることをやろう」とボランティアを中心にした組織へ再編された。

「PTA不要論も聞かれる今、保護者も学校も『PTAは何のためにあるんだろう?』と考えるタイミングが来ているんだと思います。倉賀野小学校で新設された『らがーの』ではイベントごとにボランティアを集める方式で楽しく運営していると聞きますし、コロナ禍に合わせて学校の消毒や検温をサポートするPTAの話など、高崎市内でも今の時代に合わせた在り方を模索するPTAは増えています。皆忙しくて面倒なことはやりたくないですから、ちゃんと考えなければ本当は必要な組織でも無くなってしまいます。子どもたちや地域にとって、PTAは必要か。何をしたくて、どうしたらいいのか。嫌なことばかりに目が向けられがちですが、そうしたことを考えながら、楽しく活動できる組織を考えることが大切だと思います」

高崎市PTA連合会の挑戦

特別に高崎市PTA連合会家庭教育委員会のセミナーも見させていただきました! 
大人の私も驚くほど多様な講演者が登壇し、「こんな生き方もあるよ」と気づきを与えてくれたことが印象的でした

高井さんは学校でのPTA活動と平行して、高崎市PTA連合会(通称、市P連)での活動にも取り組んでいる。学校という枠から飛び出し、保護者同士が繋がる場から見えてきた可能性についてお話頂いた。

「昨年は市P連の副会長と家庭教育委員会の委員長を担当しました。家庭教育委員会というのは、毎年保護者向けのセミナーを主催するのですが……これまでは正直なところ、参加者の中には『黙って座っていればいい』と考える人が多かったと思います。良い話や子育ての知識が得られる機会をちゃんと活用できていない、今の保護者が求めているセミナーを開催できていない、という問題意識を持ち、参加型のセミナー開催を企画しました」

同委員会のメンバーと外部講師を交え、保護者同士がワークショップをしながら“セミナーを作り上げる”という企画を提案。ワークショップでは保護者が子育ての悩みや子どもに対する想いを語り合い、保護者自ら講師探しやセミナー内容を検討した。

「保護者同士が話し合うことで、具体的な悩みや関心に沿ったセミナーを企画することができると考えました。ワークショップでは『子どもの将来の夢はYoutuberだけど、身近に配信者の知り合いもいないし、どうアドバイスすればいいかわからない』という相談に対し、集まったPTAの中で知り合いを辿り、TikTokerの方に講演していただくことができました。他にも色んな悩みや関心に対し、『私の知り合いにこんな講師がいますよ!』『子どものためにこういうセミナー内容はどうでしょう?』という提案がたくさんあって驚きましたね。多様な立場・価値観の保護者が集まって作るPTAの可能性を再確認しました」

教育とまちづくり

高井さんは高崎市倉賀野町のコミュニティスペース「桜木コミカ(co+mika)」も運営 子どもたちの居場所づくりにも力を入れているそうです!

最後にお伺いしたのは「PTAとまちづくり」について。“地域の心の拠り所”である神社の神主であり、県会議員としてもまちづくりに取り組む高井さん。PTA活動から見えてきた、教育とまちづくりのつながりをお聞きした。

「私は今、南八幡中学校のPTA会長を務めていますが、次年度の会長は共にPTA活動をしてくれた仲間にお願いしています。引き受けてくれた人は『私が会長をやるから、一緒にPTAやらない?』と別の人を誘い、誘われた人がまた、一緒に活動したい人に声を掛けていく……そういう風に、保護者同士が話をして、関係性を作りながら活動することが、これからのPTAを作る最初の一歩だと思っています」

「単年の変化を重視するのではなく、人のつながりを通じて想いを繋げていきたい」と語る高井さん。保護者自身がPTA活動に意味を見出すことができれば、おのずと能動的な活動も始まっていく――これはまちづくりのプレイヤーを増やすことも同じである。

市内の教育環境や各家庭の状況をシェアし、神主・県議・父の立場から想いを語る高井さん 
参加者からは日々の暮らしの中で直面する悩みや相談が聞かれ、皆さんの子どもを想う気持ちに胸が熱くなりました・・・!

「PTAで生まれる地域のつながりや、能動的に活動する経験は、まちづくりにも影響していくと思います。実際に南八幡や倉賀野の取り組みは、地域の中で活動する若い世代を増やしています。今、インタビューで話したことを聞いた人が、『PTAで面白いことができるかも!』と思ってくれたら嬉しいですね。家庭や子どものために始めた活動も、いずれは地域を良くすることに繋がると思うので、今後PTAが色んなチャレンジの場になっていけば嬉しいです」

家庭教育委員会のセミナー副題『あなたの地域、あなたのPTAでもできるセミナーの見本市』には、それぞれの学校でPTA活動を自由に楽しんでほしいという想いを込めた。「セミナー当日に実現できなかったアイディアも、各学校で実践してもらえれば良いなと思っています」と高井さん。会場で生まれた熱は、市内各PTAの種火へと繋がっていくだろう。

これからの地域を考える上で、その地域に暮らす人々の存在は切り離せない。未来の地域を担う子どもたちに、何ができるだろうか――そんな問いかけを始めた保護者たちの想いに、私たちも「今、未来へできること」を考え始めてみよう。

山名八幡宮(高井俊一郎)

〒370-1213 群馬県高崎市山名町1510-1
TEL:027-322-4809
FAX:027-346-2201
WEB:https://shunichiro.site

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西 涼子

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群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
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イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。

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