後編)『社会に開かれた学び』をつくる 暮らしと繋がる”教育”の未来【NPO法人DNA×高崎北高校】
今回は『NPO法人DNA』の沼田さんと、『高崎北高校』の学校長・丸橋さんに、「民間/公共の学び」について話を伺った。
これからの教育が目指す『社会に開かれた学び』とはどういったものなのだろうか?高崎で暮らす全ての人が関わる”教育”について、共に考えてみるとしよう。
2019.06.10
こちらは後編となります⇒前編はこちら
未来を拓くために
前編では、現在の取り組みや自身の“原点”について語ってくれた沼田さんと丸橋さん。このまちで暮らす2人の経験や想いに触れることは、あなたにどう影響を与えただろうか? 自身の“原点”を見つめることは、未来を見つめることに他ならない。2人の言葉を道しるべに、自分だけの学びを手に入れてほしいと思う。
さて、後編ではこのまちで暮らす全ての人に、そして何よりまだまだ“変わり盛り”の子供たちへのメッセージを語ってもらうとしよう。記事末尾には、沼田さんと丸橋さんが合同で企画しているイベント――全ての人がこのまちの“教育”に関わることができる場 ・ 『社会に開かれた学びカンファレンス』の情報も掲載している。インタビューと合わせて、このまちの/あなたの学びを考える参考にしてほしい。新たな人との出会いは、あなたにとって「ポジティブな力」をもたらしてくれるだろう。
それでは後編も、熱い“教育トーク”をしていきたいと思います!
前編ではお2人の原点となるエピソードについてお話を伺いました。自分の軸を意識することは、大人でも難しいことですが……実際に『高北』で「原点を意識する」取り組みがあると、お聞きしております(ワクワク)
はい、今年度から『高北』では、3年間の学びのプログラム『あららぎ「探究」プラン』を始めました。1年生のテーマは「自分を知る/学びを知る/社会を知る」。学校の中で、自分の一番興味があること――原点を探る時間をつくろうと思っています。
2年生、3年生と進んでいくと「自ら学びたい『問い』を設定する」など主体的な学びが重視されているんですね(熟読)……まるで大学生のようなカリキュラムだなと感じます。
僕は、大学生が自分で授業をつくるように、高校生も自分で4年間の学びをつくってほしいと考えています。「これを勉強しなさい!」と先生が主導するのでなく、生徒自身が“学びの主導権”をもつと言うんでしょうか……自分で判断して行動するという“社会の中で生きる力”を育ててほしいと思います。
今年から『総合的な学習の時間』が『総合的な探究の時間』に変わりました。センター試験の廃止など、求められている学びや身に着けてほしい資質が変化していると感じます。事実、昨年1年間かけて学校の先生たちと話し合った“高北生に身に付けて欲しい資質・能力”は、1位が「主体性」、2位が「コミュニケーション能力」といったものでした。学校の在り方も、変わらなければならないですね。
「学校で学ぶのは、勉強だけじゃないんだ!」と気付ける、画期的な取り組みですね。このグランドデザイン(上図)は全クラスに掲示してあるというから驚きです。
「勉強って何の役にたつの?」という疑問の答えの一つが、この表にあらわれているんじゃないかなと考える編集長です。
こうしたデザインをつくることも、今までになかった発想なんですよ。より細かいグランドデザインには「この教科学習を通じて、○○の力を身に付けて欲しい」というプランが一目でわかるようになっています。
社会で必要とされる力を授業の中で身につけていく中で、わが校の校訓のように「未来を拓く」子供たちを育てていきたいと思っています。
僕が支援している『総合』の授業の中には、大学生や社会人のボランティアスタッフ(センパイ)と対話する機会を設けることがあります。『未来の教室』という名前です。
そこである生徒が「私は今からでも変われるんですね」と感想を残してくれました。「高校生の皆は可能性の塊だよ!」って僕らは思いますけど、「自分はもう変われないんだ」と悩む子もいるんだと気が付いたんです。
『高北』のグランドデザインは、そうした子たちが「新しい自分の可能性」に気付くきっかけをくれるんじゃないかと思います。
自分自身の未来ももちろんですが、探究していく中で出会う社会のいろいろな出来事や物事をよりよく変えていくような、“未来を拓く力”を高北生には手に入れてほしいですね。
地域の中にある、学び
ここまでは、主に“学校教育”の取り組みについて沼田さんと丸橋さんに話を伺ってきた。学生、保護者、教職員……日常の中で学校に関わっている読者にとっては、身近な“教育”の話だったのではないだろうか。しかしながら、このまちで暮らす半数以上の人は学校や教育と繋がりのない暮らしをしており――もしかすると、“学びの場”を遠く感じているのかもしれない。
このまちの最先端で教育を考える2人に、「このまちで暮らす、全ての人に向けたメッセージ」を聞いてみよう。あなたと教育の間にも、小さな繋がりを発見できるかもしれない。
学生、もしくはその保護者でないと、なかなか関われない印象がある「学校」や「教育」の話。先ほどは『未来の教室』といったボランティア活動の話をお伺いしましたが、今後は地域と学校がどのように関わっていくのでしょうか? このまちの未来について、そして、このまちで暮らす皆さんにメッセージをお願いします。
まだまだ学校教育は「外で学ぶ機会」が少ないんですよね。まずは学校から、情報公開や情報発信をしていかなければいけないなと感じています。
『高北』での取り組みとしては、HPを新しくして学校の取り組みを発信するようにし始めました。今後はその中に「一般の方にも参加してほしいこと」も提案しようと思っています。ぜひ、手を挙げてみてもらえればと思います。
学校から地域へ、距離を縮める活動ですね。「教育に興味があるけど……どう関わっていけばいいんだろう?」と思った方は、ぜひHPをチェックしてみてくださいね。
ちなみに、もう考えている「提案」はあるんでしょうか?
ありますよ。前編でお話させていただいた、1年生のインターンシップ。ぜひ地域企業の皆さんにご協力いただいて、実現したいと思っています。「群馬にはこんな企業があるんだ」「地域にはこんな高校生がいるんだ」ということを、お互いに知る機会になるんじゃないでしょうか。
実際の地域社会を知ることも、大事な学びだと思っています。インターンシップでは学んだことや将来の仕事について考えたことをまとめて、生徒同士発表しあう機会も設けようと企画しています。『2030年の仕事図鑑』――将来、学生の皆さんがどんな仕事についているか、リアルにイメージしてほしいと思っています。
10年後、学校も地域も大きく変わることでしょう。学生の皆さんがどんな想像をするのか、どんな目線で今を見つめているのか……今から楽しみですね!
将来、地域の中で「大人」も「子供」も分け隔てなく関わっていけるよう……色んな人が関わって“教育”ができればいいなと思っています。
それは例えば、地域文化に“あいさつ”が根付くことかもしれないし、コミュニケーションの取れる家族や地域関係をつくることかもしれないし……地域で見かける学生たちのことを“想像”することも、学びに関わることなんじゃないかと思っています。
想像することが、学びに繋がる……それって、どういうことでしょうか?
これは以前、生徒たちが学校外に出て自治体へヒアリングを行った時のことでした。学校外での活動が不慣れな学生たちに「この活動は、何のためにやっていることなの?」という質問があったんです。
そこで僕が気付いたのは「地域の中で、高校生がどんなことをしているのか」あまり知られていないということでした。地域の中には、自分の興味ある分野のフィールドワークをする子や得意分野で活動する子……そして、新たな『探究』の授業によって、地域社会と関わりながら学ぶ子たちが多くいます。1人1人、違った“学びのタネ”をもっている――そんなことを、ちょっと想像して彼らと関わってほしいんです。
ふむふむ。確かに、地域の高校生や中学生が「どんなことを学びたいのか」って考えたことなかったですね。大学生が卒業研究をするように、全ての人に開かれた学びの場づくりを、地域社会もしていきたいですね。
学校、保護者、そして地域。私たちが取り組みを発信することで、5年後には高校生が「外で学べる」環境づくりをしていきたいと思います!
思い出してほしい、あなたが学生だったころを。そしてイメージしてほしい、このまちには十人十色の“学びのタネ”をもった子供たちがいることを。
丸橋さんの「学校からの発信」は、普段意識していなかった教育とのつながりを意識させてくれるだろう。このまちで小さく芽吹いた『社会に開かれた学び』は、まだ始まったばかりである。沼田さんの言うように「想像」しながらこのまちを見渡せば、新たな発見があるかもしれない。
『社会に開かれた学びカンファレンス』
最後に、沼田さんが中心となって開催するトークイベント『社会に開かれた学びカンファレンス』について紹介したい。インタビューを通じて見えてきた新しい時代の“新しい教育”のカタチ。より深く知りたい/関わっていきたいというあなたを、多くの人が待っている。
カンファレンス、と聞くと難しそうなイメージがありますが……どういった内容なんでしょうか? 沼田さん、紹介をお願いします!
『社会に開かれた学びカンファレンス』は、群馬で暮らす/集うみなさんに向けた「共に考え、共に学ぶ」場です。今までお話させていただいたように……これからの教育は、皆の力を合わせることが大事というか、「高崎の学校だから学べることがある」という“地域づくり”も重要になってくると思います。学校の外で、教育を考え・発信する。そんな必要性を感じて、イベントの開催を決めました。
カンファレンスの第1セッションは「パネルトークセッション」、群馬の教育を牽引されてきた先生方に、これからの教育の未来についてお話を頂きます。丸橋先生もゲストとして、お話いただく予定です!
いきなりカンファレンスに参加する、というのは大変なことだと思います。ただ「参加するだけ」でも、深い学びがあるんじゃないかと私は思いますよ。
私もこの間、まちづくりを考える会に初参加したのですが、新しい視点の話を聞くことはとてもいい刺激を与えてくれました。
参加するだけが、“参加”の仕方じゃないと僕は思っています。教育の動きを知ってくれること、こうしてインタビューを見てくれること。情報を受け取ってくれるだけで、とてもありがたいです。
前編・後編と長いインタビューになりました。読んでくださった皆様ありがとうございます。私たちは沼田さんと丸橋さんのインタビューを通じて「教育とのつながり」を受け取っていたんですね。
カンファレンスの2部『探究セッション』では、「地域」「企業」「悩み」「フリースクール」――8つのテーマに分かれて話し合う時間もあるようです。きっと、それ以外の分野からも「学びの場」づくりへと繋がれるはず。このまちの暮らしの中で、自分たちのペースで共に歩んでいけたらいいのかな、と思います。
教育の話、難しかったと思います。これから僕たちが目指していくのは「教育じゃない視点で、教育を考えていくこと」です。「皆さんの自分の中にあるキーワード×教育」の話をもって、遊びに来てほしいと思います。
平成という時代が幕を閉じ、「新しい時代」を迎えた今。教育だけでなく、私たちの暮らしは未来に向けて変化し続けている。今回2人に語ってもらったのは“教育”の話だったが、大事なメッセージ――「私たちにできることから、関わりあっていこう」というものはすべての分野に共通する想いだろう。あなたの行動一つが、このまちの未来をつくる。彼らの言葉をきっかけに「共に考え、共に学ぶ」まちをつくっていこう。
社会に開かれた学びカンファレンス
これからの教育の未来を、8つのテーマから探究する
◆開催日時 2019/06/22 13時~17時半
◆開催場所 高崎経済大学7号館→群馬県高崎市上並榎町1300
◆定員 150名
◆参加費 社会人1,500円 学生500円
◇特設ページはこちら
【第一部】パネルトークセッション「これからの教育の未来は、何を目指していくのか?」
ゲスト:高崎経済大学 名誉教授 DNA創始者 大宮登氏
共愛学園前橋国際大学 学長 大森昭生氏
群馬県立前橋北高等学校 学校長 丸橋覚氏
★群馬県内で活躍中の先生方にパネリストになっていただき、トークセッションを行います!
本インタビューに協力いただいた丸橋先生はゲストで、沼田さんは進行役として登場予定です。
最先端のこのまちの教育の話を、2人の生の声を聴いてみてください。
【第二部】探究セッション「これからの教育の未来を、8つのテーマから探究する」
テーマA「高校生・保護者・教員、みんなで語る!未来の高校教育とは?」
テーマB「子どもたちが前向きな未来を思い描くために、地域の大人ができることってなんだろう?」
テーマC「学校以外の“学びの選択肢”?子どもが安心して学べるフリースクールの可能性とは?」
テーマD「教育の力を最大化するために!これからの学校と地域・企業・大学の連携の形とは?」
テーマE「人生100年時代における『学び続けられる力』の大切さと、育むための私たち大人の役割とは?」
テーマF「ともに悩もう、ともに語ろう!将来や人間関係で『困った』と感じている子に対して、私たちができることとは?」
テーマG「探究StartUP‼ 学びを競い合える探究仲間に出会おう!」※高校生限定
テーマH「授業『未来の教室』は群馬の10代を支える授業になっているの?」
★「キーワード」×「教育」のセッション、あなたが一番興味のあるテーマはどれだったでしょうか?
社会人のみなさんも、高校生の皆さんも、色んな意見に触れてみてくださいね!新たな発見があるはずです。
NPO法人Design Net-works Association(DNA)
住所:〒370-0827
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FAX: 027-372-4067)
この記事に関連するメンバー
西 涼子
どうも、こんにちは!
群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。
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