ささえる

高崎市飯塚町 街を/企業を支える力 キャリアコンサルタントが架ける橋

中小企業の街・高崎市にてキャリアコンサルタントを行う『Philosophy』の猪瀨さんにインタビュー。
“働く人”に焦点を当てた活動から個人・企業・街の未来について語っていただいた。

2020.07.01

高崎市を支える力

白を基調とした明るいオフィスにお邪魔して、インタビューをさせていただきました!

高崎市と中小企業

中小企業の街、高崎市。市内企業数の99%を占める11000社以上の力は「街づくり」にとって欠かせないものだ。街に暮らす人々の雇用をとおして生活を守り、地域コミュニティを盛り上げ、ビジネスという橋が新たな関係人口を創出している。地域を愛し / 地域に愛される企業と共に、この街の未来は作られている。

 

 

国家資格である「キャリアコンサルタント」について、猪瀨さんに詳しくご説明いただきましょう。 よろしくお願いします!

『Philosophy』

高崎市の中小企業支援の中で「“働く人”に焦点を当てた活動をしているキャリアコンサルタントがいる」と聞き、高崎市飯塚町へとやってきた。『Philosophy(フィロソフィ)』代表の猪瀨慶久(いのせよしひさ)さんは、今年の4月に開業したばかりのキャリアコンサルタント。個人のキャリアを支えることで、地域企業と街全体を支えていきたいと語ってくれた。

個人・企業・行政のちからを合わせて作られていく、街の未来。猪瀨さんの取り組みを参考にしながら、私たちのこれからを考えてみよう。

お久しぶりの更新となりました『高崎で暮らす』。

大変な時期だからこそお届けしたいアッツイ記事をお楽しみくださいませ!

キャリアを照らす

「商いの街・高崎」にとって身近なキャリアの話 暮らしと繋がるストーリーをお楽しみください~

キャリアコンサルタント

まずは猪瀨さんより「キャリアコンサルタント」についてご説明いただいた。近年耳にすることが多い“キャリア”の言葉。私たちの暮らしとどのように関わり、どのように考えるべきものなのだろうか。

「“キャリア”とは『自分が歩いてきた轍(わだち)』のこと。キャリアプラン・キャリアデザインといった言葉からは“仕事”を連想しがちですが、プライベートなことも含めた“人生設計全て”を指す言葉なんです。つまり、僕らキャリアコンサルタントの仕事は“人生設計に伴走すること”。専門家として相談に乗ることで、課題発見や支援先の情報提供など、悩みに寄り添い適切にアドバイスすることを仕事にしています」

「具体的な職域として一番イメージしやすいのは、求職者支援の『ハローワークでの職業相談』や『学生向けの就職相談』でしょうか。キャリアコンサルタントの仕事は分野や対象に決まりがなく、支援先・支援内容は様々です。僕の場合は企業を対象(to B)に採用支援・人事評価制度の運用・キャリアコンサルティングを行っているので、採用~定着~活躍までを一気通貫でご支援しています」

「年々、キャリアコンサルティングの需要は増加していますよ」と話す猪瀨さん。国も広くキャリアコンサルティングの普及促進を行うべく様々な施策を行っており「多様化する暮らし方・働き方」や「変化の激しい時代」に合わせた人生設計が重要視されていることがわかる。

今年初めから問題となっている「新型コロナウイルス」による影響で、自分の“キャリア”に大きな変化があった人もいるだろう。嵐のような時代の中で道しるべに灯りを照らす人――それがキャリアコンサルタントなのだ。

 

 

「個人を元気にすることで企業を、企業を元気にすることで街を元気にできる」と力強く答えてくれた猪瀨さん 私たち1人1人ののキャリアは、街にとっても大切なものなんですね

支えたいものは

続いてお聞きしたのは、猪瀨さんがキャリアコンサルタントになった“きっかけ”について。過去の悔しい経験から自身の使命を見つけたと語る、キャリアコンサルタントになるまでの歩みを伺った。

「新卒で入社した会社は製造業の会社で、僕は人事総務の仕事をしていました。入社した年に親会社が変わり、長年勤めていた方が辞められたり新たな機運に盛り上がる方がいたり……僕にとって、成長と混乱が入り混じったスタートでした。その後、2008年に『リーマンショック』が起こり、会社は大打撃を受けます。様々な対策を講じましたが影響は大きく、中には仲間である社員に対して後ろ向きな取り組みもあり、どうすることも出来ない自分の無力さを痛感しました。何もできないことが、本当に悔しかったのを記憶しています」

「そんな中、僕は会社の業績回復のために組まれた『構造改革プロジェクト』への参加を言い渡されました。社長が指揮を執り常務や事業部長がメンバーとなる中で、ただひとり“入社2年目の僕”。会社としても待ったなしの取り組みのため、時には工場の現場責任者から胸ぐらを掴まれるような厳しい体験もしましたが、全社一丸となったプロジェクトは業績をV字回復させ成功に終わりました。僕にとってすごく勉強になった経験でしたし、何より『(プロジェクトを)這ってでもやりぬけ、その先に救える人たちがいる』と社長にかけてもらった一言が嬉しかった。あの時の経験が僕の指針を作り、『何も出来ないと悔しく思った気持ちを、前向きに還元しよう』と思えたきっかけになったんです」

「(企業に何かあった時に)個人が自律していけるような支援をしたい」と活動を始めた猪瀨さん。それから10年、社会保険労務士事務所や群馬労働局など“働く人を支援する立場”を軸に異なる現場での実務経験を積み、その中で国家資格キャリアコンサルタントの仕事と出会ったという。

「少し厳しい話になりますが、企業のリストラクチャリングは今後益々増えていくでしょう。それでも、例えば会社から急に解雇されてしまった時、個人にエンプロイアビリティ(雇用され得る力)があれば『別の会社に雇ってもらう』『個人事業として数社と業務提携する』『在職時のリソースを活かして起業する』等の選択肢が生まれます。自分自身のキャリアにおける“手札”が増えるわけです。年功給制度はもはや瓦解していますから、これからはどんな環境でも適応できる自律した人材が会社にとっても素晴らしい財産となるでしょう。僕はキャリアコンサルティングを通じて、会社と個人の両軸での支援に繋げていきたいと思っています」

キャリアコンサルタントの仕事を「対話を通して、轍から功績(宝石)を一緒に掘り起こす事」と表現してくれた猪瀨さん。

自分自身で見えない「輝き」にであうチャンスが、ここにあります……っ!

街を支えるちから

YouTube配信のテーマは「キャリアコンサルタント」×「忍者」……詳細は動画にてお確かめくださいっ!

中小企業とつくる未来

猪瀨さんのキャリアコンサルティングは、150名以下の中小企業をメインに行われている。「規模感にこだわる理由」には、猪瀨さんが大切にしている“仕事の哲学”が関係しているとのこと。中小企業と共に見たい未来の高崎について語っていただこう。

「中小企業、中でも少人数のところに絞って仕事をしている理由は『体温を感じる現場感と物語』があるから。僕は仕事の哲学として『おもしろい志事(しごと)をし続ける』こと――支援先に関わる人(買い手・売り手・担い手)にとってWin-Win-Winの世界を作ることを掲げていますが、経営者だけ・社員だけの支援ではなく『全員で良くなる』『1人1人に寄り添う』『自社製品にかける熱い想い』を近くで感じながら“二人三脚”で進むことを大事にしています」

「また、スピード感ある中小企業の中には個人と向き合いながら社内整備をする間がないところもあると思います。僕は経営資源の「ヒト」に関すること全てをコンテンツとして提供していますので、仕組みや制度等のハード面・感情や心といったソフト面と向き合いながら社内環境を整えるお手伝いができると自負しています。企業規模の利を活かした支援ができる、そんなことも中小企業を応援したい理由の1つになっています」

企業と人を切り離すことなくキャリアコンサルティングを行う猪瀨さんの想いは、多くの市町村で「街づくり」と合わせて語られる「人づくり」の構図と似ている。街で暮らす人への支援が街を作り、企業で働く社員を支えることが企業を作っていく。「人」を中心とした循環が未来を支える力となっている。

「町全体の産業が盛んになって、全国の企業が高崎の好事例に注目してくれるようになったら面白いですよね! 市町村の枠に収まらず、地域企業さんが大きく活躍していく未来になれば嬉しいです。この街には、しっかり高崎に根付いてキャリアを育てている人が多いように感じます。そんな人たちと協同しながら、お世話になった中小企業の方々に恩返しをしていきたいと思います」

事務所で撮影させていただいた『ヨーロッパ橋』の写真 橋の先にはどんな景色があるのでしょうか……

未来に橋を架ける

事務所に飾られた、1枚の風景画。1876年にフランスのギュスターヴ・カイユボットによって描かれた『ヨーロッパ橋』の景色は、猪瀨さんにとって大切な意味を持っている。絵から感じた想い、街に伝えたい想い。最後に「これからの活動」について考えていることを聞いてみた。

「『Philosophy』のロゴのモチーフでもある『ヨーロッパ橋』の風景には、第一次産業革命の時代の流れと多様な身分の人々が描かれています。蒸気機関車から煙が上がる中、シルクハットを被った上流階級の人や落ち込んだ様子の低所得者の人が同じ橋を渡っている……。僕がこの絵と出会ったのはちょうどリーマンショックのタイミングで、今の自分を絵の中の自分物たちに重ね合わせて見ていたものです。第四次産業革命を生きる僕らも、彼らのように1本の橋を渡っている――変革する時代に合わせて、自分をアップデートしながら進んでいる。そんな人々を支えられる、“橋”のようなキャリアコンサルタントになりたいと思っています」

「日本のキャリアコンサルタントは5万人弱、群馬県には374人。まだまだ人数が少なく、認知度も低いのが現状です。国家資格だからと言って、国や誰かが認知度を向上してくれるのを待っているわけにはいきません。悩んでいる人や困っている人が『キャリアコンサルティング』という言葉までたどり着けるように情報発信をしていきたいと考えています」

「今は自分自身も楽しみながら、YouTubeやSNSを活用しています。『面白い人がいる!』『キャリアって何だろう?』……そんな風に、色んな入り口からキャリアに触れる機会を提供していければ嬉しいです」

人と人、人と時代を繋ぐ“橋”の役目を、キャリアコンサルタントとして担いたいという猪瀨さん。同じ企業、同じ街で活動する私たちは繋がることで、より大きく力強く成長できるだろう。

高崎で暮らす私たちの一日が、未来の街の一日を作る。街の“架け橋”を活用しながら、より豊かで鮮やかな未来の絵を描いていこう。

『Philosophy』

住所:群馬県高崎市飯塚町368-1 柊ショップ5
電話:080-3711-9322 ☚左から みないい救済ニンニン ☚右から 二人三脚でいい波
※YouTubeチャンネル「キャリアコンサルタント忍者キャリコン ヨシ忍」も開設中!

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

どうも、こんにちは!
群馬県でフリーのライターをしている西(編集長)です!
地域を盛り上げる力は市民から!ということで、
イチ高崎市民の目線から、高崎市の魅力を発信しています。

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