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【前編】高崎市中尾町 ブランディングデザイナーに聞いた「暮らしとデザイン」の考え方

企業や自治体のブランディングデザインを手掛ける『株式会社グティ』の代表・関口さんにインタビュー。「ブランディング」と「デザイン」の話から、私たちの暮らしのカタチを考えるヒントを教えていただいた。多岐にわたるテーマに触れながら、「私たちとブランディングデザイン」について共に考えてみよう。

2019.12.27

高崎市とブランディングデザイン

井野駅から車で3分、おしゃれな外観のデザイン事務所にて取材をさせていただきました(画像中央)

街づくりとデザイン

デザインの重要性が“地域”の場で語られるようになって数十年。近年、高崎の街づくりにおいても多種多様なデザインが地域活性化・地域の魅力発信に用いられている。地域の商品・風景・観光……私たちの暮らしのスタイルも含めて、“このまちのデザイン”に共通点はあるのだろうか。今ここで生きる私たちならではの、暮らしをより良くするデザインとは何だろうか。

 

 

本記事のためにグラフィックもデザインしてくださった関口さん、面白く学び深いお話をたくさんしていただきました

『株式会社グティ』

高崎市とデザインについて想いを巡らせながら取材に訪れたのは、高崎市中尾町。企業や自治体のブランディングデザインを手掛ける『株式会社グティ』の代表・関口稔(せきぐちみのる)さんにお話を伺うことができた。「ブランディングデザインを通じて、幸せで賑わう社会の実現を目指す」とビジョンを語る彼は、どのように街づくりと関わっているのだろうか。“私たちの暮らしを、より豊かにする”という観点から、「ブランディング」と「デザイン」の話を聞かせていただこう。

本インタビューは前編で「ブランディング」の話を、後編で「デザイン」の話を紹介していく。一見専門的にみえるデザインの知識や考え方も、プロの手によってひらかれてゆけば……“魔法のように”、私たちの暮らしのカタチを考えるヒントが浮かび上がってくるだろう。「まちづくり」「子育て・教育」「女性の社会進出」「企業のブランディング」と多岐にわたるテーマに触れながら、「私たちとブランディングデザイン」について共に考えてみよう。

前編後編のロングインタビュー!街づくりだけでなく、私たちの暮らしをよりよくするためのヒントがたっぷりつまっております。じっくりゆっくり、お読みくださいませっ

デザイナー

まずはデザインとの出合いから。 順番にご紹介していきます

デザインとの出合い

高崎市中尾町を拠点とし、企業や自治体のブランディングデザインを行う関口さん。以前は都内の大手広告代理店に勤めるなど、国内・国外でのデザイン業務に携わっていたという。彼がデザイナーを志したのは大学生の時。紆余曲折の道のりを駆け抜けた、「デザイナーになるまで」の体験を語っていただいた。

「大学では『ロボット工学』をやろうと思っていましたが、全くプログラミングができなくて挫折。同じ研究室の悪友が3D映像を作るアルバイトをしていて、『何やらオシャレっぽいことをしている、なんだこれは!』と彼の部屋にあったマッキントッシュに興味を引かれた――というのが、“僕とデザインの出合い”です。友人がDJをしていたこともあって、僕らはVJ(visual jockey)を始めてみたり。なんとなく、デザインに憧れをもって大学時代を過ごしていました」

「そのまま大学4年生となり、就職活動の時期。僕は一生懸命頑張って、メーカーのエンジニア職の内定をいただきます。ところが内定受諾の書類をポストに入れる間際『……やっぱり、デザイナーになりたい!』と思ってしまって。内定を辞退し、大学を無職のままで卒業してしまったんです」

デザイナーへの憧れから新たな道を進む決断をした関口さん。現在の多種多様な人がデザイナーになるデザイン業界と違い、当時は「美大・デザイン系専門学校卒の人ばかりいる世界」だったそう。理工学部出身・実績もない彼を雇う会社はなかなか見つからず、思わぬ仕事に就くこととなる。

「ひたすら面接を受け続け、ようやく『デザインができる』と聞いた会社に入社したんですが、入ってみたらTV番組の制作会社でした。下っ端ADとして3年くらい、3日4日寝られないのが当たり前の生活をしていて。『社会ってこんなに厳しいんだ』と思うほど先輩には怒られるし、自分は仕事ができませんでした」

「ある時、仕事のできる先輩に聞いてみたんです。『先輩はなんでそんなに、仕事ができるんですか?』って。すると返事はたった一言『好きだから』と。ガーンときました……自分はなんでADの仕事をしているんだ、デザイナーになりたかったんじゃないのかって。先輩も僕の描いた絵を見て『お前はこっち(デザイン)に行け』と言ってくれて、そこからまた『自分にはデザインの道しかない』と信じて面接を受け続ける日々が始まるんです」

先輩の助言、その生き様に“デザイナーへの憧れ”を思い出した関口さん。2度目の就職活動が実を結び、デザイナーとしてのキャリアをスタートしていく。

 

 

初めてブランディングからデザインを行ったという事例をご紹介いただきました。隅々までいきわたった事業の熱い思いが、見る人を惹きつけます!

デザインとミッション

デザイナーとしての修業時代を経て、グラフィック・ファッション・建築など多岐にわたるデザイン業務を経験してきた関口さん。順調に活躍を続けながら、家族との約束を守り30歳で高崎の街へと戻ってくる。地元に帰った後の「デザイナーを辞めようかと考えた時」についてお話いただく中で、この街で見つけたデザインとの繋がり・仕事への気付きを教えてもらうとしよう。

「デザインの仕事に就いた当初、成し遂げたいことをリスト化して活動していました。目標としていた項目は、全て30歳で達成できて。『もうやることないなぁ』と燃え尽きた状態で地元に戻ってきたんです。この街ではグラフィックの仕事をする側ら、雑貨屋を営んだり、靴職人の修行をしたり。20代の頃の“デザインが好き”という気持ちだけではモチベーションが上がらず、ブランディングの重要さには気が付いていたものの『きっと他の誰かが、デザインやブランディングをするだろう』なんて思っていたんです」

デザイナーを続ける意味を見つけられないまま、燃え尽きていたという関口さん。しかしながら、周囲で「ブランディング」の声が聞かれない状況に“ある気づき”を得たという。

「ブランディングって大事だよね――誰かが言うと思っていたことを言う人はおらず、僕は友達相手にブランディングの話をしていました。すると友達が『ブランディングをしたい』というお客さんを連れてきてくれて、ブランディングデザイナーとしての仕事が生まれて。――僕はこの時、『自分に残された役割は“ブランディングデザイン”(しかないの)ではないか?』ということに気が付きます。“好き・やりたい”から始まった仕事が、“社会的なミッション”になった。僕の“デザイナーを続ける動機”が見つかった瞬間でした」

デザインが好きだという想いや憧れだけでなく、社会との関わりの中に“デザイナーであること”の意味を見つけた関口さん。『株式会社Guty』のミッションに掲げられた「ブランディングを通じ、企業、地域、そして日本の価値向上に貢献する」という想いは、自身のブランディングデザイナーを続けていく使命でもあるのだ。

“好き・やりたい”という気持ちを入り口に、自分自身のミッションを見つけることを教えてくれた関口さん。私たちも色んなモノゴトに興味をもつことで……運命的な出会いがあるかもしれませんね

ブランディングをデザインする

ここ、テストにでます――というくらい大事なグラフィックが登場! いよいよ「ブランディング」のお話がはじまりますよ~!

『Be-Do-Haveの法則』

そんな関口さんの考える「ブランディングデザイン」は、私たちの暮らし・生き方に大きなヒントを与えてくれる。まずは「セルフブランディング」など一般に知られた言葉となった「ブランディング」について、考え方を説明していただこう。

「ブランディングの役割を簡単に言い換えるならば、『仲人』でしょうか。A社とB社、そしてお客さんがいるときに、お互いにハッピーになれるマッチングを手助けする手段だと考えています。具体的にはA社の仕事への想いや商品の魅力を発信することで、A社の想いに共感するお客さんが会社や商品を知ることができたり、A社で働きたい人に来てもらえたりしますよね。必要な情報づくりやコミュニケーションの設計をすることで、企業の持続可能性を広げていきたいと思っています」

ブランディングを考える方法論として、『Be-Do-Haveの法則』を導入している関口さん。“Be”は「あり方や想い」、“Do”は「行動や仕事」、“Have”は「成果」を表しているという。

「“Be”から“Do”が生まれ、“Have”へ繋がっていくイメージ。ブランディングをするときには特に“Be”を知ることが重要になってきます。先ほど僕は『“ブランディングデザインを広める”というミッションを見つけた』という話をしましたが、あのミッションが僕の“Be”――仕事への在り方、想い、理念です。自分自身は何者なのか、何故その仕事をするのかというところから、ビジネスを立ち上げていくのが僕のブランディングデザインとなります」

『森人の梅(福島農園)』は美味しさもさることながら、かわいいパッケージが贈答品としても喜ばれています

以前「高崎で暮らす」に登場していただいた福島さんの商品『森人の梅(福島農園)』は、関口さんがブランディングデザインを行っている。作り手の「里山の自然、日本の食文化を守りたい」という想い“Be”をベースに、ブランド名やパッケージ・新商品がデザインされた。“Be”を軸に事業をデザインすることで、“想い”がブレないビジネスとなる。変わらないものを見つけることは、私たちに様々な変化の可能性を見つけてくれる。

「“Be”を見つけるのはすごく大変で、数か月、1年かかることもあります。企業であれば代表者の今までの経験の中にエネルギーの元となる“Be”があることが多いですね。そこを掴むことで、様々なデザインに無駄がなくなって効率化することができます。例えば福島さんの『森人の蓮根』は『森人の梅』と同じ“Be”(想い)を持っていますからブランド名もすぐに決めることができました。0からデザインするのとは大違いですね。かつ、ブランド価値の共有も行うことができます。売り場で蓮根と梅が離れていても『同じ生産者が、同じ想いを込めて作っているんだな』ということが一目でわかるんです。それぞれにポップを作ったり発信したりしなくてもいい、コストダウンや効率化につながります。ブランディングを行うことは、効率化・生産性を上げる面でも重要なんです」

 

 

“つよくて、しなやか”

前編の最後に関口さんは「“Be”のあるブランドは“つよくて、しなやか”です」と表現してくれた。まっすぐ天に向かって伸びる竹をイメージさせる、ブランド。この街に根を張るその姿は、どのようなものだろうか。

「“Be”のブランディングについて話すとき、僕はよく竹のイメージを使います。竹って面白くて、広い竹林に生えている竹は“地下茎”という茎で全部繋がった1個体なんだそうです。だから日当たりの悪いところに生えてしまった竹も、他の竹から栄養を貰って大きくなることができる。“Be”で繋がったブランディングも同じで、ブランドを共有する事業や人はお互いを支えあえるんですよ」

「さらに竹は強風でも折れないようデザインされています。しなやかだから生き残れる、事業や個人も同じですね。『今までうまくいっていたから、変えるべからず!』というカチンコチンの竹(“Do”)では生き残れません。“Be”に軸足を置きながら、事業やあなた自身の“Do”をしなやかに変える新しいチャレンジが必要です」

副業やパラレルワークが身近になった今の時代、私たちの生き方も同様に考えられるのかもしれない。自分自身の“Be”を確かにつかむことで、様々な自分が表現できる。チャレンジングな時代を、強くしなやかに生きるためのアドバイスだ。私たちの“Be”は何か、高崎の街の“Be”は何か。考えながら、楽しみに後編を待ってほしい。

 

はやいもので、2019年も終わりとなります。後編の更新は来年の1月! ワクワクしながら新年をお待ちくださいませ!

本年も『高崎で暮らす』をお読みいただきありがとうございました。また来年もどうぞ、よろしくお願い致します。

株式会社グティ(Guty)

住所:群馬県高崎市中尾町699-3
TEL:027-377-5960
E-MAIL:info@guty.co.jp

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この記事に関連するメンバー

西 涼子

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